村境における厄除けの民俗
疫病や災害に対して先人がどのように向き合ってきたか。
帝塚山大学考古学研究所の市民大学を視聴させて頂きました。
勉強させて頂いたことの一部を備忘録として記録します。
写真はWebなどからお借りし、最後にURLを記しています。
<村境とは>
かつて人は、村の中で一生を終えることが少なくなかった。
経済活動は自給自足、結婚も村内や近隣の村の間で行われ、村が世界のすべてだった。とすれば、村境は今でいえば国境のようなものであり、常に緊張感があっただろう。村の外側は人知の及ばない世界であり、未知の世界である。悪いものがはいってくることを恐れ、厄除けのためのさまざまな儀礼が行われた。
「村の中心と村の境は文化ターミナルである」
<事例>
(1)秋田県大館市新沢「ドンジンサマ」
ドンジンサマは「土神様」「道祖神様」の意味かと思われる。
腰蓑をつけた男女ペアの人形が、集落の上下の境に設置されている。
木製で、全身が朱色で塗られており、年月を経て両腕を失っている。
背後に飾られている垂れ幕には「鹿島大明神」とあり、「鹿島大明神」は、茨城県鹿島神社の武神を祀る神様のことである。
(2)茨城県常陸太田市 星の宮町 「大助人形」
麦藁を固く束ねて、胴体・手足・頭部を作り、半紙に武士の顔を書いて頭部に貼り付け、脇に刀を差し、手にも刀を持たせる。
祭がある7月10日までにあちこちに立て、祭の当日には子どもたちが人形を持って集まり、ぶつけて壊して火にくべる。
昔はこの中に餅を入れて、焼いて食べていた。
(3)長野県安曇野市明科東川手柏尾 大日堂「風神祭」
藁人形に、和紙作った白装束を着せ、地面に刺しておき、祭がおわると叩いて捨てる。
おひねり(半紙でくるんだ米)を交換して持ち帰り、焚いて食べると1年間無病息災だと言う。
(4)長野県長野市大岡丙「芦ノ尻道祖神」
正月に各家庭に飾られていたしめ縄を集めて、石碑に巻きつけて、目・鼻・髭をつける。
1年毎に新しく作り変える。
(5)長野県松本市両島「足半草履」
足半(あしなか)草履とは、山を歩いてるとかかとがつかないため、半分しか作らない草履のことで、大きさは成人男性の身長くらいある。
2月8日「お八日念仏」に足半草履を飾り、みんなで輪になって、数珠のかわりに縄を回しながらは八念仏を唱える。
終わると足半草履を、村境の上と下の、見上げるような高い木に結びつけ、こんな巨人が村にはいるんだぞと威嚇することで、無病息災を祈る。
お八日念仏と足半草履は、市重要無形民俗文化財に指定されている。
<参考資料>
(1)秋田県Web観光案内所
https://www.akitabi.com/ninngyou-gaso/arasawa.html
(2)いばらき蕎麦の会 2020年最終更新
http://ibarakisobanokai.org/2020/08/20/%E7%96%AB%E7%97%85%E5%B9%B3%E5%AE%9A%E3%82%92%E9%A1%98%E3%81%86%E5%A4%A7%E5%8A%A9%E4%BA%BA%E5%BD%A2/
(3)市民タイムスWebサイト 2024年1月15日
https://www.shimintimes.co.jp/news/2022/03/post-17396.php
(4)長野市公式Webサイト
https://www.city.nagano.nagano.jp/n205100/contents/p003209.html
(5)中日新聞Webサイト 2023年2月14日
https://www.chunichi.co.jp/article/635406
カバー写真:長野県長野市大岡丙「芦ノ尻道祖神」