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鳩とやさしさにふれた朝

夜は雨になりそうなので、いつもの自転車通勤はやめて、徒歩で最寄り駅に向かっていた。
駅前の車道で一羽の鳩がもがいていた。飛べないようで、歩くことも難しい様子。
比較的交通量の少ない道なので、気づいたドライバーさんがゆっくり近くを通っていく。
自然界の生き物だし、寿命は必ずあるだろう。とはいえ、車道で車にはねられて迎える最後はあまりに痛々しく、ドライバーも後味悪いだろう。
ただこのままでは時間の問題だなぁ。そう思いながら、歩道の柵の内側からしばらく様子を見ていたら、反対側からひとりの女性が通りかかった。少女というよりはもう少し成長されている。ただ私の年齢からするととても若く、とってもかわいらしい女性だった。
鳩をなんとか車道から出そうとするがなかなかうまくいかない。思わず目が合う。
私も助けるという覚悟を決める。そこはおばちゃんの知恵で、持っていた日傘に追い込んで、鳩を掬い取る。ただ、近くに安全と思える場所がない。
さて、どうしたものかと思っていると通りがかりの女性が、「カラスにつつかれたのかね~。公園までいったら木の茂っているところがあるけど」とと声をかけてくれた。
それほど遠くなく公園があることは知っているが、歩いて鳩を持って行って放して戻ってくるのは、時間と体力的にちょっときついなぁ…と思っていたら、若い女性が「私自転車なので、行きます」と言ってくれた。「お時間大丈夫ですか」と私のことも気にしてくれる。とってもいい子だ。
自転車かごにそのまま鳩を入れても、飛び出しかねないし、取り出すのが大変そうだ。野生の生き物だから、あまり触らないほうがいいかもしれない。カバンから買い物などに使っていた厚手のビニール袋を取り出し、彼女の自転車のかごに広げて、鳩を落とし込んだ。すかさず、彼女が手提げ状態にして自転車を走らせた。
あとは任せたよ。名乗ることもなく、二度と会うこともないかもしれないけれど、若い彼女の優しい気持ちに一緒に寄り添えてよかったと思った。


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