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「新しく旗を立てたいなら、過去に学べ?」人気児童文庫作家が語る創作のルール【後編】

いま子どもたちに大人気の児童文庫
毎月たくさんのエンターテインメント小説が世に送り出されています。それに伴い、「書きたい!」という人も増加傾向に?
でも、いざ書こうと思ってもどうやって書いていいのか……。

という方のために、人気児童文庫作家3人とお三方を担当する編集者が、創作についてみんなで根掘り葉掘りしてみようと試みたのですが……後編はかなりディープな様相を呈しております。

>>>>【前編】を読まれてない方はまずこちらをどうぞ!<<<<

👇改めてメンバー紹介です。

あさばみゆき(写真左)
2013年に第12回角川ビーンズ小説大賞奨励賞を受賞。14年、第2回角川つばさ文庫小説賞一般部門金賞を受賞。「いみちぇん!」シリーズが大ヒット。著書に「歴史ゴーストバスターズ」シリーズ(キミノベル)、「星にねがいを!」「サバイバー!!」シリーズ(角川つばさ文庫)など。あさば深雪名義もある。

針とら(写真真ん中)
「絶望鬼ごっこ」シリーズ(集英社みらい文庫)で人気爆発。キミノベルでは「小説 魔入りました!入間くん」の文章を担当。他の著書に「死神デッドライン」シリーズ(角川つばさ文庫)、「恐怖の帰り道」シリーズ(学研プラス)などがある。

みずのまい(写真右)
『お願い!フェアリー♡ ダメ小学生、恋をする。』(ポプラ社)でデビュー。同シリーズは「おねフェア」と呼ばれ、23巻まで続く人気シリーズに。みらい文庫「たったひとつの君との約束」シリーズも大人気に。キミノベルでは「クリエイティ部!」シリーズを執筆。22年8月に『あなたの恋をかなえます ダーク』でホラー小説に挑戦。

松田拓也(ツイッター:@tm_xt)
一般書編集を経て、現在は主にキミノベルを編集。『歴史ゴーストバスターズ』『小説 魔入りました!入間くん』『クリエイティ部!』『幽霊お悩み相談室』『撮影中につきおしずかに!』『コトダマ!』『私は存在が空気』『かがみの孤城』(キミノベル版)『星の王子さま』などを担当。

では、あさばさんからガチャを回していただきましょう!


【問9】流行りのジャンルを取り入れたい派?  流行りのジャンルを作ってやるぞ派?

あさば これはだいぶ大人な話……

松田 キミィ(キミノベルのレーベルキャラクター)も……

キミィやのべぺんのデザインはクイックオバケさん。大人気のキャラクターです!

みずの プルプルしてる(笑) キミィって、おいしそうだよね。

松田 食べないでください!(笑)

あさば 『歴史ゴーストバスターズ』の時は、流行りがどうとかぜんぜんおっしゃられなかったですよね。

松田 そうですね。『いみちぇん!』(角川つばさ文庫)を拝読して面白いと思ってお声がけしたので、「学べる要素もあるといいなぁ」というお話はさせていただきましたが。そういう組み立てのプロット2つ、別ジャンルのを1ついただきましたね。

あさば さっきのみずの先生の「パチパチパンチ」【前編を参照】じゃないですけど、私も「学び要素×何か」みたいな芸風になってきちゃって……。

みずの そうだよね、男女二人で。

あさば それ以外のプロットが通りづらくなって……。

みずの だとしたらもう、叩き続けるしかない(笑)

あさば もう腫れ上がってる(笑)。さっきの本屋さん見てキーワード云々言ったんですけど、自分が興味持てない流行りのジャンルだとやっぱりあんま手を出したくないな~~。楽しくできることを選んでいくことも大事かなという気も。

 僕は、流行ってるとやりたくなくなっちゃう。この頃、デスゲームものはたくさん出てきたから、もう自分はやりたくないなって思っていて……(笑)。それは他の人が書いてくれるだろうと思って。

あさば 『絶望鬼ごっこ』は、最初に旗を立てた先駆者ですよね!

松田 これ、愚問でしたね……。お三方とも、流行りのジャンルを作った側でした(汗)

みずの でも流行りのジャンルを作ってやるぞって言っても、その大元はなにかありますよね。例えば、いまの「逆ハー」の元って『キャンディキャンディ』なんじゃないかなって。

あさば そばかすなんて気にしないやつですよね。

みずの そうそう。『花より男子』も逆ハーだけど、たぶん『キャンディキャンディ』の影響はなんらか受けてると思う。でも、その前にはオルコットの『8人のいとこ』があって。そう考えると、流行りのジャンルって全部、その前・その前・その前・その前っていうのがあって……。

 昔の流行りを取り入れるのは、やりましたね。

松田 新しく作るなら過去の作品に学べ、ということでしょうか。まったくの0からというのはなかなか難しいですし、ファッションでも音楽でも、流行は20年周期だとよく言いますよね。いま80年代的なビジュアルがブームなのも、2周してますよね。

 過去の漫画や映画からヒントを得て、何か新しいものを加えるというのはやりようがある。

松田 それもまたセンスですね。では次、針とらさん!


【問10】これだけは曲げられないということはある?

 とりあえず、曲げてみてから考える!

みずの 柔軟だった(笑)

 一回曲げてみて、 ここの部分は曲げたら折れるなってなったら、もうそれ以降は曲げないように(笑)。この曲がり方は実は楽しいってこともあるけど、曲げまくっていった先に「ここだけは曲げると故障する」みたいな部分が出てくると思うから。それが具体的にどこだって言われると、あんま覚えてない……いや、曲げますよ(笑)

みずの 私は睡眠時間。8時間必要。

一同 (笑)

みずの そこをなんか6時間でやれみたいなこと言われたらやめる。そこぐらい(笑)。でもね、提案されないと、なかなか新しい自分を発見できないかも。

 それはわかる。

みずの こんな人物は書きたくないなって思っても、書いてるうちに新しいチャクラが開く感じがあるから。

あさば ずっと考えてたんですけど、特に無茶な相談をされたこともないですし……。編集者さんも大人だから話せばわかるし、むしろ育てていただいていますので、勉強できるところはしていきたいですね。

松田 恐縮です……では次、みずのさん!


【問11】児童文庫レーベルが増えていることについてどう思う?

みずの これもつっこんだ質問ですね! そういえば前に「そのうち崩壊するかも」って私が言ったら、ハリーは「そしたら新しい楽園が生まれる」って(笑)

 (一同爆笑&拍手👏)

みずの 人が集まってくるっていうことは、すごく活性化するってことで、いいことだと思うんです。でも、お互いつぶし合っちゃうと……あとちょっとこれは……(笑)

松田 カットしますよ(笑)

ーーーーーーーーー✂ カットしました ✂ーーーーーーーーー

みずの 文庫レーベルが増えるにつれて、本当はジャンルの幅が広がるのが、文化の美しい形だけれど、みんな似たり寄ったりになっちゃったらもったいないよね。

 うーん、そういう意味では、児童文庫の作家さんはいろんなレーベルで書く人が増えてきたけど、自分と合うところがあったら、そこで書いていくだけかもしれないですね。そこで多様性が出てくると楽しいなと。

あさば たぶんこれはカットになると思うんですけど……

ーーーーーーーー✂ やはりカットしました ✂ーーーーーーーー

あさば つまりは、いろんなジャンルとか、自分が好きなものを出すことを諦めないでやっていかないといけないなぁって思ったりしたり……。

みずの 松田さんはどう思うの!?

松田 えぇ!?

みずの 私、松田さんの意見がいちばん聞きたい。だって、一般文芸から来てびっくりしなかった? なんでこんなにレーベルがいっぱいあるんだ? って。

松田 いや、レーベルの数自体は驚かなかったですね。一般書の文庫レーベルを持っているのは、約20社と言われているので。それでも出版社の数からしたらすごく少ないんですけど。ただ正直、こんなに似たテーマの本が出てるんだ!? って思ったことはあります。「キミノベル」は立ち上げのときに、いろんなお話を届けたいっていう思いが編集部みんなにありました。その中でヒットしたものがキミノベルのカラーになっていくだろうと。今もその気持ちは変わってないですが。

あさば いろんなジャンル出してらっしゃいますよね、本当に。

松田 そうですね。比較的男の子主人公のものも多いですし、他社さんがあまりやらないディストピアものや魔法ファンタジー、YA、古典映画のノベライズなどいろいろやってます。できるだけその幅広さは維持していきたいですが……。

あさば やっぱり「何部刷れるんだ?」とかあるんですか?

一同 (笑)

みずの けっこうきわどい……。いいぞいいぞいけいけ!(笑)

松田 これ以上はヤバい!(笑) あさばさん、回してください~!


【問12】こんな編集者はちょっと

あさば ははは(笑)。これですか、やばい質問がひとつ混じってるって(笑) えー、私、今まで担当さんに恵まれてるので……。

そんな編集者はいません

松田 次、針とらさん!


【問13】執筆の時間は決めてる? 一日に何枚書く?

 僕はあんまり決めてないですけど、太陽が出てる間に書きます。もともと会社員してたから、朝起きて、働いて、日が暮れたら帰る、みたいなルーティンはあんまり崩せなくて。時間自体は決めてなくて、ノッてるときはずっと書いてるし、今日はもうだめだと思ったら諦めます。だから一日に何枚書くとかも特に決めてなくて……ちゃんとやれてる人はすごい!

みずの 私は、〆切まで「何枚×何日」って計算して、カレンダーに「ここで初稿終わり」とかって書いてる。執筆の時間は、みんなに怒られるかもしれないけど、4時間は超えない。人間ってどんなにがんばっても、集中できるのは一日3時間なんだって。

あさば そうなんですか!?

みずの そう! だからこう、わーーーって書くのは3時間か、がんばっても4時間くらい。それ以外の時間は、なにか見たりとか読んだりとか、ぬいぐるみと遊んだりとか(笑)

あさば なるほど(笑)。私、子どもを学校に送るとだいたい8時くらいになるんですけど、そこから夜の1時とか、2時くらいまで、だいたいずーーっと……

みずの ずーーっと!?

 え!?  ずっと?

あさば あ、でもあの、子どもが帰ってきてご飯つくったりとか家事があるので、間ちょっと抜けたりしますけど。

みずの 家事の隙間にやってるって感じ?

あさば 家事はあんまりしてないんですけど……家事は嫌い(笑)。うちごはん早くて、5時半くらいに食べたあと、宿題を見たりするので、だいたい再開するのは8時とか9時とかです。だから実際は3,4時間で凝縮するとできるはずの仕事量しかしてないんですけど。 Twitterも見ちゃうし……。

みずの Twitter量けっこう多いですよね。

松田 Twitter量(笑)

あさば ダブルモニターにしちゃったんですよ。そしたら原稿の横にずっとTwitter画面があるんですよ。それがよくない(笑)

みずの 一日何時間寝てるんですか?

あさば でもあの、昼寝したり意識失ってたりするので(笑)

松田 みずのさんは寝るの早いですよね。

みずの 私、寝るの早いよ。

あさば 大切ですよ。健康第一(笑)

松田 では、そろそろ時間ですし、今日はこの辺で…… 。

ーーと、本当はここで終わるはずだったのですが、質問が少し残っていたため、ガチャルールはどこへやら、急遽ざっくばらんに話すことに。


【延長戦1】電話とメール、どっちがいい?

みずの この質問、なんか意味あるんですか(笑)

松田 知りたいという編集者がいまして……

あさば 私、メール派です。

 僕は電話派です。

あさば 針とら先生、zoomとかしますか?

 コロナ前は会ってやってたんですけど、コロナになってからは電話かzoomです。メールって、すべての指摘を同じ重さで読んじゃうんですよ。けど、実際に話してみると、「ここはさらっと言っただけでそんなに大切じゃない」「ここは重要」みたいな違いってあるじゃないですか。だから話した方が柔軟にできるなって。

松田 針とらさんに電話すると、猫ちゃんと寝てることが多くて。

一同 (笑)


【延長戦2】タイトルが先? 内容が先?

 タイトルってあんまり、作家が決めなくないですか? 編集部と営業部でわちゃわちゃやってるのを、僕と担当でぼんやり眺めてた……(笑)

あさば へーー! みずの先生も?

みずの いろんな人が30個ぐらい出して、その中で「これはいい、あれはよくない」っていう感じだったかな。でもその通りにもならない。

 最終的に、編集長の鶴の一声で決まったり。

松田 あさばさんはどうですか?

あさば 一応なんか、提案100個くらい出して、向こうも100個くらい出して、じゃあどうするかみたいな感じ……。

松田 タイトルは、それだけ本気で考えないといけないんですね。

 一巻の売り上げは「イラストが7割、タイトルが3割」という編集さんもいました。

あさば 作家の部分がひとつもない(笑)。0.5%くらい本文の最初とか入れてほしいですね。でもそう思うと、一巻売れなくても自分のせいじゃないや(笑)

みずの 気楽にやれる(笑)

あさば 2巻からは自分の責任が……

 その編集さんは本当にパッケージングにこだわり持ってる人だから、自負心で言った部分もあると思うんですけどね! 本文も0.5%くらいはありますよ、たぶん!

※ちなみに『クリエイティ部!』と『歴史ゴーストバスターズ』は、どちらも先生の案で最終的に決まりました。サブタイトルは松田がつけていることが多いです。


【延長戦3】ひとの児童文庫を読んでる?

みずの ハリーはね、いろんなシリーズを一巻を読んでるよね。

 そうですね。

あさば 今も一巻はだいたい網羅されてるんですか?

 今は増えすぎたんでさすがに……。

みずの 児童書文庫っていうか、仕事の合間に急激にハマるものが突発的にあらわれて、ずーっとそれを読み続けたりはするかも。

松田 普通に面白くて読む感じですか?

みずの うん。これ私の性格だと思うんだけど、例えば恋愛もの書いてる時だったりすると、恋愛ものには一切触れない。あさばさんのはサバサバしてる……あさばサバサバ(笑) から、いいんだけど。恋愛もの書いてる時は、『13日の金曜日』とか『ジョーズ』とか『オーメン』とか、なんだろう、常に真逆のものに触れて、自分のエネルギーを持続させる感じ。

やはりみずのさんの心にはゴルゴが(『お願い!フェアリー♡』初版の著者紹介)

あさば 占星術的なあれですか、対角のラインにあるものを。

みずの そうなのかなぁ(笑) 『クリエイティ部!』は元気いっぱいだから、しっとりしたものにハマったりとか。

あさば 確かに自分が書いてる時に他の人のを読むと引きずられたりしますよね。私もあんまり読めなくて、そういうの。

みずの 知り合いでてんぷら屋さんをやってる人がいるんですけど、「普段なに食べてるの?」って聞いたら「お茶漬けとインスタントラーメン」って(笑) そういうことなんだろうな。

あさば なるほど(笑)

松田 最後が茶漬けとインスタントラーメンになりましたが、そろそろ今日のまとめを……どんな順番で出てくるかわからなかった質問ガチャでしたが、期せずして、後半にいくにつれディープなものが増えていきましたね。その分、カットも増えて……(笑)。最後に皆さん一言、感想をいただければと!

みずの もう、こっから飲みたかったよね!

あさば お酒があればー!(笑)

 放送禁止に……(笑)

そしてこの後、四人は酒を飲みかわしながら、ピー音が鳴り響く宴を開いたとか開いていないとか……。

では、また会う日まで!