まっ赤なすいか、おいしそう!『ありとすいか』――絵本を思い出すところ#20
絵本の中の風景へ想いを巡らすとき、それを手にした幼い頃の記憶もまた、絵本の思い出の一部になっていく――そんな「絵本を思い出すところ」を編集者とカメラマンが探していきます。
こんなところに、
すいかがひとつ。
だれが食べるのかな?
絵本のなかから、ぞろぞろと、
ありたちが出てきました。
ビスケットに、キャンディーに、
ポテトチップス。
ありはお菓子を見つける名人です。
巣のなかは、ありたちが持ち帰った
お菓子でいっぱい!
パカッ!
まっ赤なすいか、おいしそう!
どうやら、ありたちも
見つけたようです。
「これは うまいぞ」
自分のからだよりも大きなすいかを
みんなでせっせと巣に運びます。
巣のなかは、すいかの
においでいっぱいです。
あっという間に、無くなりました。
残った皮はどうするの?
それは絵本を読んでからのお楽しみ。
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『ありとすいか』 作・絵/たむらしげる
ある暑い夏の午後、小さなありたちは大きなすいかを見つけます。みんなで協力して、すいかを巣に運ぶありたち。おなかいっぱいになったありたちは、最後にすいかの皮も持って帰ります。
お菓子やすいかが詰まった巣穴をのぞく楽しさは、ありの観察に夢中になったこどもの頃の記憶と繋がります。たむらしげるさんの絵本デビュー作であり、独自の世界観の原点と言える作品です。
鮮やかな色使いで、みずみずしくすいかが表現されており、思わずかじりつきたくなってしまいます。赤に対比されるように、濃く黒く描かれた影の表現は、夏特有の日差しを思い起こさせます。この季節が来るたびにページを開きたくなる1冊です。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/2041005.html
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(撮影協力/だちょう牧場 並木屋 文・編集/齋藤侑太 写真/白井晴幸)
ポプラ社 齋藤侑太
1985年、茨城県生まれ。2012年、ポプラ社入社。営業職、社内デザイナー、幼児向け書籍の編集を経て、2020年から絵本の編集を中心に担当。
白井晴幸
東京都生まれ。2010年、多摩美術大学卒。作家として活動する傍らカメラマンとして本の装丁や風景、建築などを撮影している。≪Website≫