「僕、タイのお坊さんになる」②
8月7日
今日は出家コースの初日。
集合は栃木県にある「タイ瞑想の森」。
朝の5時前に起きて身支度をし、新幹線と在来線を乗りついて、人生で初めて栃木県に足を踏み入れた。
会社には、お盆休みと合わせて、夏休みと年休をもらうことで了解を得た。
もちろん、会社の人全員には「出家する」なんて言えなかったが、仲の良い友達や先輩には、訳を話した。
人によって反応はそれぞれ。
「おおぉ。行ってらっしゃい」という人もいれば、「ヤバイ宗教じゃない?」なんて心配してくれる人も。
某宗教団体が起こした大きな事件や、宗教絡みでの銃撃事件などの影響もあり、近年は「宗教」というものには、あまり良いイメージがないのかもしれない。
ただ、「タイでは、男性は一生に一度出家すると良いという風習があるんです」と、説明をすると、もともとタイに住んでいたことを知っている人たちは、比較的簡単に「そうなんだ」と、理解をしてくれた。
最寄駅はJR「宝積寺」駅。
読み方は「ほうしゃくじ」と読むらしい。
乗り換え案内でずっと「ほうせきじ」と検索をしていて、「まさか乗り換え案内に出てこないほどの秘境!?」なんて思っていたが、読み方を間違えているだけだった。
駅に着くと、タイ人のスタッフの方がプレートを持って待っていてくれた。
カタコトの日本語ではあったが、とても笑顔で迎えてくれたから、初対面ではあったけど、すごく安心した。
車にはもう3人くらいの人が乗っていて、僕が4人目。
車の中ではさすがに緊張してしまい、挨拶以外は一言も話すことができなかった。
駅から車で「タイ瞑想の森」までは数十分。
到着すると、食堂と言われる広い部屋に通される。すでに何人かが先に到着していた。それから、メールでやり取りをしていた日本人スタッフの方や、タイ人のスタッフの方、面接の時にお会いしたお坊さんなどが出てきてくれた。
みなさんとても笑顔が素敵な人たちだった。
受付開始の13時まで、同じ出家予定者の人たちと「出家請願の言葉」を練習したり、過去に出家したことのある人の話を聞いたりして過ごした。
人数比で行くと、参加者の年齢層は比較的高めだが、各年齢層に1〜2人づつくらいはいるので、「シニアばかり」や「若者ばかり」ということはなかったし、みなさんフレンドリーな人たちばかりで、とても助けられた。
11時30分ごろからは昼食。
在家信者の方が、食堂の横にある厨房でタイ料理のビュッフェを作ってくださっていた。
タイのお坊さんは、基本的に托鉢(鉢を持って食事をもらう)されたものしか食べることができないのだが、日本では、環境的に毎日托鉢をするのは難しいため、スタッフの方や在家信者の方が、お布施としてお坊さんに料理を作っているそう。
その後、お坊さんから食事前の祝福の言葉(パーリ語のお経)を読んでもらい、お坊さんたちとは別の卓に準備された、タイ料理のビュッフェを食べた。
小さい頃住んでいたとはいえ、タイ料理はあまり得意ではないのだが、瞑想の森で出されるタイ料理はどれもとても美味しく(おそらく日本人向けに調整してある?)、食事に困ることは一度もなかった。
13時の受付開始の際、必要のない荷物は終了まで預かってもらうことになった。
もちろんスマホも例外ではない。
いつも暇さえあればスマホで動画やTiktokばかりを見ていたから、これからしばらく触れない、と思うと少しばかり寂しい気持ちになった。
(ここから終了までは、基本的にスマホは触れない。事情があれば、個別には対応してくれるが、会社などから連絡がくる可能性のある人は注意が必要だと思う。)
受付で荷物を預けた後、ロンピー(僧侶のこと。ロンピー〇〇、と法名の前にロンピーとつけることが多い)と一緒に、これから生活するためのテントを張ることになった。
そう。お釈迦さまは菩提樹の下で瞑想しているときに悟りを開いたので、この出家コースでも、瞑想の森の中にある瞑想庭園にテントをはり、そこで生活するのだ。
山登りでテント泊をしたことはあるが、9日間もテントで生活するのは初めてのこと。テントを張っている時は、気温も30度前後あり、「こんなんで寝れるのか!?」と不安でいっぱい。
テントを張った後は、シャワーの時間。
といっても、あたたかいシャワーではなく、冷水を浴びるのだ。
テントを張るところまでは、修学旅行やキャンプの気分だったが、冷水のシャワーを浴びているときには「あ、お坊さんになるために来たんだった」と、再認識させられた。
シャワーの後からは私服ともお別れ。
用意してくれている白い服に着替える。
びっくりしたのは下着を着用しないこと。
ノーパンで着用することになる。
慣れるまでは違和感しかないが、2日くらいしたら慣れるので問題なし。むしろ還俗したときにパンツを履くと、違和感を感じるようになってしまった(笑)
シャワーの後は、ロンピーと瞑想をしたり、お経を唱えたりして時間を過ごした。
お経は独特のリズムや発音で難しい…。でも、カタカナ表記でちゃんと教えてくれるので、特段知識はなくても問題はなかったです。
お経の練習と瞑想を終えたら、21時30分ごろに自分のテントへ戻り、寝る前の瞑想をする。
テントの屋根の上にはアマガエルが2匹。とても可愛かった。
昼間はテントも暑かったが、夜は風が心地よく、移動の疲れもあったのか、就寝時間の22時にはすでに眠ってしまっていた。
いよいよ明日は「剃髪式」だ。
つるつるの頭になるのがちょっと嫌だし恥ずかしい。
でも自分が決めたことだから、最後までやり切ろうと思った。