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トランプ大統領就任から1カ月過ぎたアメリカ

2025年1月20日(月曜日)、トランプ大統領の就任式がありました。この日から約1カ月が経ったわけですが、本当にめまぐるしく世の中が動いているように感じます。
トランプ大統領が矢継ぎ早に出す大統領令や政策に、熱狂している方も多いようです。しかし、アメリカ在住の日本人である私としては、居心地の悪さを感じてしまいます。

正しいか間違っているかはまだわかりませんが、現時点で私のまわりで起きたことや私自身が感じたことを書きたいと思います。


友達は移民。身近に起こりうることを実感。

子どもたちを乗せるスクールバス

トランプ大統領がさまざまな政策を打ち出しているので忘れがちですが、就任直後から動き始めたのは「移民問題」でした。不法移民を強制送還させるということで、不法かどうかを問わず移民と思われる人たちに声がかかるといわれていました。

就任式の翌日、学校から帰ってきた息子がぽつりと言いました。
「同じクラスのメキシコ人の子、学校に来てなかった」
息子が言うには、来ていなかったのはクラスでも陽キャで、机の上に座って大きな声で雑談をするタイプの男の子だそうです。

「寒いから風邪をひいたのかもよ?」私は言ったものの、なんとなく胸騒ぎを覚えました。おそらく息子も私と同じことを思っていたのだと思います。
「うちの学校、移民多いでしょ?帰されちゃったりする子もいるのかな?」

息子のクラスの陽キャくんは、翌日もその翌日も学校を欠席していたそうです。帰宅するたびに「また今日も休みだった」と暗い顔の息子。
しかし、3日後に彼は登校してきたそうです!
「なんか、インフルエンザだったんだってさ」

私もその報告を聞いて、胸をなで下ろしました。しかし、この出来事で大統領令が私たちの身近に変化をもたらすものだと実感させられたのも事実です。見た目が完全にアジア人である私自身も、もし移民当局から問われたときに下手な英語できちんと説明できるのか不安になりました。

学校の対応に涙が出そう。

学校からのメールに癒やされた

私たちだけではなく、身近なところに住む多くの家庭が不安な気持ちだったのだと思います。就任式から1週間経たないうちに、息子が通う学校から一斉メールが入りました。メールの内容は次の通りです。

  • 学校は子どもたちが安全に教育を受ける場所なので安心してほしい

  • 学校が当局へ子どもたちの情報を提供することはない

  • 子どもの入学にあたって、保護者のパスポートやビザなどの提示を求めることはない(今までもしていない)

メールを受信したときにまったく反対の内容を覚悟していた私は、一度英語のまま読んで「まさか、読み間違えていないよね?」と翻訳にかけて、やっとありがたいメールだと理解しました。
ほっとして思わず涙が出てしまい「もしかするといろいろ見過ぎて疲れているのかもしれない」と思いました。SNSでは公立の学校に移民当局が来て、不法移民の子どもたちが連れていかれたという情報を見ることがあったので。(信憑性は不明です)

多様性はなくなった。でも目の前にいる人は存在し続ける。

ルーツの多様性についても考えさせられる

トランプ大統領の就任演説で注目を集めたのは「男か女という2つの性別しか認めない」という言葉でした。これは性的マイノリティーを認めないという意味です。実際にさまざまな企業がこの方針に従っています。

アメリカは日本に比べて多様性の意識が進んでいると私は思っていましたが、それはあくまでも「理性」や「知性」に基づいて律していた結果だったのでは?と、今は感じるようになりました。実際には「本当は好ましく思っていなかった」人が多かったのかもしれません。

これは性的な話だけではなく、人種に対しての多様性も同じだと思います。アメリカは「人種のるつぼ」と呼ばれ、さまざまなルーツを持つ人たちが暮らす国なのだと、私は小学生の頃に習いました。しかし、今の政権を見ていると、本当はあとから来た移民を歓迎していないんだろうと感じます。

過去にさまざまな地域で起こったことがあるように、何かのきっかけで根底にあった嫌悪感が噴出したら、マイノリティーは攻撃の対象になってしまうのかもしれません。
多様性に対するお墨付きがなくなりつつあるなかで、マイノリティーが存在し続けることの意味を考えてしまいます。

パレスチナへの対応に心底がっかりした。

本物のリビエラ。脳内では森進一が歌っています。

トランプ政権が始まってすぐに「ガザ停戦決定」というニュースがあり、ほっとしました。そのまま恒久的停戦になっていたら、私はトランプ支持者になっていたかもしれません。
しかし、その後トランプ大統領は「ガザをアメリカが所有して、中東のリビエラにする」と発言。ガザの住民は帰還せず、他の土地へ移住すべきだとも言いました。

やっとパレスチナの人たちが落ち着けるのだと思っただけに、心底がっかりしました。アメリカファーストなのに、なぜ中東問題に口出しをしているのだろう。品のなさを感じて、とても悲しくなりました。

昨年私は映画「ガザ 素顔の日常」を観たのですが、ここで描かれているときよりもきっと現在はもっとひどいことになっているのだろうと思います。

世の中が変化するなかで何を大事にしていけばいいのか?

情報の真偽を確認することって大事だけど難しい。

アメリカだけではなく日本でも、ここ数年でさまざまなことが明るみに出るようになりました。そういったなかでSNSなどでは「陰謀論」の話題が盛んに出ることもあり、何が本当なのか情報を見極めるのが難しいと感じます。

変化の多い時代に「古い考えに固執するのはダメなのではないか」と、私自身も反省することがあります。しかし、一方で「良し悪しは自分の経験と良心で判断するしかない」とも感じるのです。直感的に「これはいかがなものか」と思ったものは、やはりあとからダメなところが露呈するということが今までもありました。

結局は「バランス」の一言に尽きるのかもしれませんが、自分が培った良心は大切にしながらも柔軟にものを見る練習をしようと思っています。

まとめ

日本では「トランプ大統領のようなリーダーが登場してほしい」という声も見聞きし、なかには「トランプ大統領が日本にはびこる不正もただしてくれる」と思っている方もいるようです。しかし、実際にはアメリカはそこまで日本を重視していないし、思い通りにならなければ日本にとって不遇といえる決断を下されることもあるはずです。やはり、日本が変わりたいなら、自分たちで変えていくしかないのではと思います。

私はトランプ大統領への熱狂は、小泉純一郎氏が内閣総理大臣になったときの雰囲気に似ていると感じます。熱狂的な支持を背景にさまざまな改革を行う様子に、ある種の清々しさを感じる方もいるかもしれません。どの時代もそうですが、今行われている改革が正しかったのか誤りだったのかは、もっとあとになってからわかるものでしょう。

アメリカや駐在妻に興味を持っている読者さんのなかには、こんな政治的な発言を聞きたくないという方もいるかもしれません。しかし、変わりゆくアメリカに住む経験はなかなかできないことなので、ここで感じたことを新鮮なうちに率直に書きました。おそらく次からは普通の日常に戻ります。

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