【PubMedで翻訳練習:人名=病名編】Dの巻:DiGeorge Syndrome(ディ・ジョージ症候群)
*PubMedで「人名を冠した病名」をアルファベット順(A-Z)に検索→論文を1つ選びアブストラクトを和訳。(なぜ人名=病名をキーワードにしたかは、この記事の最後をご覧ください。)
●本日の人名=病名:D (DiGeorge Syndrome) ディ・ジョージ症候群
●本日の論文:『染色体22q11.2欠失症候群およびディ・ジョージ症候群』
Sullivan KE. "Chromosome 22q11.2 deletion syndrome and DiGeorge syndrome." Immunol Rev. 2019;287(1):186-201. PMID: 30565249
●病名の由来:1965年、イタリア系アメリカ人の医師で、小児内分泌学者のAngelo Mario DiGeorgeが、最初に報告した。
●アブストラクト和訳
染色体22q11.2欠失症候群は、ヒトの微小欠失症候群のうち最もよくみられる疾患である。その影響は多様で、非常にばらつきがあるため、統一した対処法をとることは難しい。それにもかかわらず、共通点が解明され、推奨評価法が記載された白書や予備的ガイダンスが公表されている。本総説では、免疫システムを詳細に記述し、胸腺形成不全症に関連した主要な特徴および副次的特徴の双方について考察する。他器官の関与についても、背景として、簡略に考察する。身体全体に存在する免疫システムは、アレルギーや自己免疫疾患を通じて他器官の機能に悪影響を与え得る。我々の研究により、胸腺形成不全症の主な影響は、T細胞産生の制限であることが示された。それに続く、恒常的増殖やおそらく他の要因が Th2型免疫応答を推進し、成人期に最も顕著となる。このことは、アトピーのリスクにもつながる。胸腺形成不全症はまた、制御性T細胞を減少させ、全体として自己免疫疾患のリスクを増大させる可能性がある。まとめると、影響は複雑でしばしば年齢に依存する。今後の目標として、胸腺機能の改善や胸腺量の増加により、感染、アトピー、自己免疫を改善させる直接的な治療が可能かもしれない。
●PMID: 30565249
●検索日:2020年7月4日
*できるだけ新しい論文(Display optionsをMost recentに設定)、また病態がざっと分かるように各論ではなく総説(Publication typeをReviewに設定)を選ぶようにしています。
●感想・難しかった点
免疫系は、身体全体を走っており、あらゆる箇所に影響を与え得るので、非常に複雑で、治療的介入が難しいことを改めて感じました。しかし裏返せば、免疫系に不具合があると、患者さんのQOLにあらゆる方面から影響を与え得るということなので、困難でも研究を進める意義は大きいですよね。研究の進展を心から願います。
あとアホな感想を言うと、イタリア系の名前(ディ・ジョージとか)ってカッコいいな~と思いました^^
※どうして、人名=病名をキーワードに?
「PubMedで翻訳練習」の別シリーズとして、人名が病名になっている疾患をキーワードにしています。アルツハイマー病や、パーキンソン病など人名が病名になっている疾患はたくさんありますが、その疾患を最初に発見した医師や研究者などの名前=病名になっているために、病名を見ただけではいったいどんな病気なのか見当がつきません。先に挙げたアルツハイマー病やパーキンソン病であれば、広く知られているため病態を知っている方も多いと思いますが、マイナーな病気であれば、お手上げです。ということで、勉強もかねて、人名=病名をキーワードにしました。できるだけ、一般に浸透していない病名を選ぶつもりです。