【PubMedで翻訳練習:人名=病名編】Aの巻:Angelman syndrome(アンジェルマン症候群)
*PubMedで「人名を冠した病名」をアルファベット順(A-Z)に検索→論文を1つ選びアブストラクトを和訳。(なぜ人名=病名をキーワードにしたかは、この記事の最後をご覧ください。)
●本日の人名=病名:A (Angelman syndrome) アンジェルマン症候群
●本日の論文:『アンジェルマン症候群:マウスモデルから治療まで』
Rotaru DC, Mientjes EJ, Elgersma Y. "Angelman Syndrome: From Mouse Models to Therapy" [published online ahead of print, 2020 Feb 21]. Neuroscience. 2020;S0306-4522(20)30103-2. PMID: 32088294
●アブストラクト和訳
UBE3A遺伝子は、染色体15q11-q13領域の一部であり、欠損や重複が高頻度で起こるため、複数の神経発達障害を引き起こす。アンジェルマン症候群は、機能性の母親由来UBE3Aタンパク質の欠損が原因となる。一方、父親由来のUBE3A遺伝子は存在はするが、特に神経細胞で発現が抑制されている。アンジェルマン症候群の患者は、重度の神経発達遅延、顕著な運動障害、発話不能、知的障害、てんかん、睡眠障害を呈する。アンジェルマン症候群の病態生理はいまだ不明であり、治療法はない。アンジェルマン症候群の動物モデルは、アンジェルマン症候群患者にみられる遺伝子型および表現型の特徴を再現しており、疾患進行の理解ならびに適切な薬剤ターゲットの特定に、非常に重要である。これらのアンジェルマン症候群のマウスモデルを用いて、UBE3Aタンパク質の欠失が、おそらく脳の多くの領域に影響し、神経細胞の興奮増強やシナプススパインの欠失を引き起こし、多くの特徴的な行動変化を伴っていることが分かった。誘導的アンジェルマン症候群マウスモデルにより、行動的表現型および生理的表現型に対する重要な治療範囲を特定することができた。更に、アンジェルマン症候群マウスモデルにより、アンジェルマン症候群に特徴的な病理形成に、UBE3A優位型細胞核アイソフォームが重要な役割を担っていることが示唆された。最後に重要なこととして、アンジェルマン症候群マウスは、アンジェルマン症候群の治療として非常に有望な、Ube3a遺伝子再活性化治療のガイド役として不可欠である。
●PMID: 32088294
●検索日:2020年5月27日
*できるだけ新しい論文(Display optionsをMost recentに設定)、かつ論文全文が入手可能なもの(Free full textにチェック)、そして病態がざっと分かるように各論ではなく総説(Publication typeをReviewに設定)を選ぶようにしています。
●感想・難しかった点
非常に深刻な難病ですが、アンジェルマン症候群の子どもは幸福感の高い性格であり、"幸せな人形症候群"と呼ばれていた時代もあったようです。また水が好きで、余暇にプールを楽しむ子も多いのだとか。
しかし、原因がある程度解明されても、治療法がない疾患というのは、患者さんにとっても、そのご家族にとっても、非常につらい状況だと思います。今回紹介した研究などが進み、治療法が見つかることを心から祈っています。
英語的には、基礎研究の論文でしたので、専門用語が合っているのかどうか自信がありません…「the predominantly nuclear UBE3A isoform」など。
※どうして、人名=病名をキーワードに?
今回、「PubMedで翻訳練習」の別シリーズとして、人名が病名になっている疾患をキーワードにしてみました。アルツハイマー病や、パーキンソン病など人名が病名になっている疾患はたくさんありますが、その疾患を最初に発見した医師や研究者などの名前=病名になっているために、病名を見ただけではいったいどんな病気なのか見当がつきません。先に挙げたアルツハイマー病やパーキンソン病であれば、広く知られているため病態を知っている方も多いと思いますが、マイナーな病気であれば、お手上げです。ということで、勉強もかねて、人名=病名をキーワードにしました。できるだけ、一般に浸透していない病名を選ぶつもりです。