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「何やっても〇〇さんだよね」から脱却するための思考術。芝居における「自分の癖」との向き合い方。

日々、授業やレッスンをしていると、その人特有の癖を目撃することが多くあります。例えば…
・目線の使い方
・セリフのリズム
・間の使い方
・体の動きが説明的
・受け方、聞き方。など
それらが役の思考や感情を表現するのに効果的なものであれば問題はないのですが、全ての芝居(つまりどんな役を演じても)に自分の癖が出ていると、少し厄介です。この記事を読んでくださっているアナタが俳優であれば、一度は聞いたことのあるであろう「何をやっても〇〇さんだよね」状態になってしまう可能性があります。

「何をやっても〇〇さんだよね」って、この業界では、あんまりポジティブな意味で使われる言葉ではないです。

この「何をやっても〇〇さんだよね」状態を脱するために、その人特有の癖を指摘すると、先生と生徒という関係性も相まって、受講生がその指摘を「これはやっちゃダメな事なんだ」って受け止めがち。と、言うか指摘をした時の反応を見て、そう思ってるなって感じることが多いです。

結論から言えば、癖は直さなくても、なくさなくても大丈夫です。

ただ、少し考え方を変える必要があります。
それは自分の癖を、一つの選択肢として捉える。と言うこと。

自分じゃない誰かを演技で表現するのが俳優の仕事ですから、時には自分では考えられないようなリアクションであったり、思考を持たなければならない状況もあります。その時に自分の癖が役との齟齬を生み出してしまっては、もったいない。冒頭にも書きましたが、自分の癖が役の思考や感情を効果的に表現できるものであれば、その癖は強力な武器になりますが、それがハマってなければ、その癖は芝居に対して邪魔になります

この記事の目的は、自分の芝居に対する癖、ついついやってしまいがちなものを、ダメな事と考えるのではなく、選択肢の一つとして捉えることで、ポジティブな気持ちで芝居に取り組めるようにする事です。
では、どうすれば自分の癖を、選択肢として捉えられるようになるか? 超個人的見解を述べていきます。

まずは自分の癖を自覚する

これは芝居に限ったことではありませんが、自分の癖って、無意識にやってるから癖なんです。なので、まずはそれを意識化することが大事。
「あ、今これやってんな」って自覚することで、無意識に行なっていることを意識化することができます。

癖を置き換えて考える

癖って言うと、何かネガティブなイメージがあるので、そこをまず変える。ついついやってしまうって思うから、何となくダメな事っぽくなるのです。
そうではなくて、自分にはそういう習慣があるんだと捉える。それも一つの武器なんだと捉える。

選択肢を意図的に増やす

芝居をする時の表現方法の手段が自分の癖=習慣しかないから、いつも同じ芝居になる。じゃあ、いつもと違う事をやってみようって、意識的に違うことをやる。この時に大事なのは、自分の癖=習慣を選択肢から外すのではなく、それもあるけどこっちを使うという思考でやること。癖をやっちゃダメな事とするのではなく、自ら選択肢を広げる、武器を増やすという姿勢で取り組むこと。

自分を楽しまさせる

日本語として合ってるかどうか分かりませんが、いつもと違う選択肢を選ぶ自分を楽しまさせる事が、上達のカギだと思っています。人を成長させる最も大事なものの一つが好奇心だからです。その好奇心をくすぐる最も効果的な感情は楽しい。だから、自分を楽しまさせる。いつもと違う選択肢をしたことで、どんな結果が待ち受けているのかワクワクすること。この時に大事なのは、違う選択肢を選ぶときは、いつも自分のやっていることと真逆のものを選ぶこと。少しずつ変えるより、最初に大きく変えて後で調整する方がはるかに楽だし、結果から得られるものが多いと考えているからです。
この結果の積み重ねが、自分の芝居のスタイルを確立させるための大切な要素の一つになります。

自分の芝居が、作った演技プランが良かったかどうかなんて、やってみないとわかりません。どうせわからないのなら、ネガティブな気持ちで臨むより、ポジティブな気持ちで臨んだ方がいいに決まってます。いつもと違うことをすることに不安になると、選択はついつい”逃げ”や”楽”な方を選びがちです。どうしても不安が拭えないのなら、嘘でもいいから「ワクワク」と口に出して自分を奮い立たせるのもアリです。
自分の芝居をよりよくさせるために、自分の癖をダメなことと思わず、演技プランを作る時の選択肢の一つとして捉える事。その上で、役の思考と感情を最も効果的に伝えられる表現は何かを選択する事で、芝居の振り幅は大きく変わってくるし、ポジティブな気持ちで取り組めるようになるはずです。

「何をやっても〇〇さんだよね」から脱却するための思考術はこれひとつではありませんが、癖はなくさなくても、直さなくてもいい。それもひとつの選択肢、武器と捉える。そして、自分の癖=習慣と向き合うために、まずはいつもと違う選択をすることを楽しむ。というのはいかがでしょうか?

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