[25] 覚えるべきたった1つの財務指標
ROE、流動比率、EVA、…。
無数の財務指標が世に溢れる中「どれも重要と言うから覚えるけど、何か違う」といった声がよく上がります。
これは健全な反応です。
「財務指標は答えに非ず」という財務分析の本質が息づいているからです。
知りたい事(例:強み・弱み)まで辿り着くのに、実際そんなに多くの財務指標は必要とされません。
数多くでなく、1つ。
初めにそれを見る。
そんな財務指標は何でしょうか。
あなたが一番好きな財務指標です。
それで良いのです。
答えが財務指標に無いのなら、どれが最適かなど神学論争に過ぎません。
「営業キャッシュフロー(CF)」を挙げる人もいます。
正解です。
「使い方」があります。
営業CFの「余裕額」
よく「借入等÷営業CF」から何年で返せるかと言われますが、要注意です。
「その営業CFが続く」という非現実的な想定だけではありません。
借入等は、そもそも営業CFで全額返すものではないのです。
運転資金後で算出される、その期の営業CF。
それで返す借入等は
1. 同じ期に期限が来る。
2. 運転資金が引かれている。
「1年以内の利益償還債務」です
(図表25-1)。
営業CFでは、増加運転資金が引かれていますので、対応する「1年以内の利益償還債務」でも同額が引かれなければなりません。
営業CFから、増加運転資金が引かれた後の「1年以内の利益償還債務」を引いたのが、営業CFの「余裕額」です。
これがプラスの時、自由に使えるキャッシュが生じます(図表25-2)。
(フリーCFは「1年以内の利益償還債務」が引かれる前のものであるため「自由に使えるキャッシュ」を意味しません)
I社の「本当の問い」は
なぜ、2013年度(FY)からリファイナンスが毎期必要なのか?
である。
営業CFには、こういう使い方もあるのです。
たった1つ。
一番好きな財務指標の、使い方を覚える。
「その言葉で開(ひら)けた!」と言った人もいます。
あなたの財務指標は何ですか。
本当の財務分析はそういう所に関係する気がします。
追 記
「何か違う」
別に思わない。
これも実情です。
財務分析とは、あらゆる財務指標を調べる、
疲れる、
そういうもの。
「知りたい事」には別のフレームワーク。
これでは「財務分析イラナイ論」が出るのも無理ありません。
さて…。