まつげにカールを
日々小さなことに私は悩む。
プリン食べたいけど昨日も食べたもんな。
あの洋服屋さん見に行きたいけど入りづらいな。
あの人ともう少しおしゃべりしたいけど迷惑かな。
私は自分に自信がない。
私を取り巻く小さな悩みも大きな出来事もだいたいは自信のなさからきている気がする。
今日も、美容院に行きたくて行きたくてでも行けずにいる。
ついに美容院を選ぶことができなくて日曜の午後、サンマルクの1人席でチョコクロを食べている。
多分今、自分をガラッと変えたい。
コロナきっかけでこれ幸いと伸びきった前髪を、人生初めてセンター分けにできて結構気に入っている前髪を、そろそろ切りたい。
自信がない。
可愛くなりたいとか、新しい自分になりたいとか、そんなことを言うことがおこがましいと思っている。
でも、絶対に可愛くなりたいし、私にぴったりだわという髪型に出逢いたいオーバー30なんだからどうしようもない。
この丸い輪郭と、丸くないオデコと、貧相な後頭部をマイルドに仕上げてほしい。
童顔だけど女性らしく艶っぽく、でもどっぷり女ではなく、分かりやすくない狙いすぎない感じの髪型にしたい。
学生時代も社会人も多分モテた。
「顔は可愛くないのにね」なんて陰口も聞いた。
可愛くはないかもしれない、でも可愛らしくいようとしていた。もしかしたら自信のなさが、男性たちには可憐に見えたのかもしれない。
で、頼みたい美容師さんも通い続けられそうな価格帯の美容院も、訳の分からないオーダーになりそうな髪型も決まらないまま、まつげパーマを予約した。
いつもしないことをしてみよう。
可愛くいちゃいけないって何か脅迫めいた気持ちに気づいたので、まつげパーマで私の気持ちを上げようと試みた。
ほんの出来心みたいな私の企みは、成功したかよく分からない。
ポロポロとチョコクロがこぼれるみたいに
よく分からない気持ちがこぼれてくる。
ペラペラと剥がれて落ちる。
来週は、美容院に行こう。
くるりと根元から立ち上げるのはやっぱりこわくて。ちょっと控えめに上がったまつ毛。
指で撫でたら、ちょっと笑えて。
さあ、帰ろう。
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