冬にかき氷を食べに行く(書いた人:かがり)
12月。もうすっかり冬だ。そんな今、かき氷を食べに行った。
どうしてそうなったんだっけ。
あられと、大久保(千葉の)って何があるの、という話になって
「何にもないよ。ただ、かき氷専門店がある」
と教えてもらったんだった。
「一年中やっててさ、季節ごとに変わった味出してんだよね、トマト味とか」
「かがりと一緒に行きたいなあ」
かき氷なんて、久しく食べていない。私のかき氷の記憶といえば、お祭りの屋台のものと、和菓子屋さんのちょっといいかき氷。おいしいけど、頭がキーンとして、食べ進めたら飽きてくる…そんなイメージだった。
でもなんだか、かがりの話には興味をそそられた。かがりとかき氷専門店に行く。なんとなく素敵な予感がしたのだ。
どんな変わり種があるか気になったので、二人でお店のアカウントを覗いてメニューを見てみることにした。
ラムチョコレートのかき氷…!?なんて不思議でおいしそうなメニューなんだ…
アルコールの匂いは嫌いだけど、お菓子のラムの香りが好きな私はどうしても惹かれてしまった。食べてみたい…
あられもラムチョコレートに興味を持ったようだった。ラムは苦手らしく、チョコレートだけがいい、と言っていたけど。
ラムチョコレートは冬限定。温かくなったら行きたいな、程度に思っていたのに…
お店の中は温かいらしいし、温かい飲み物もあるらしい。厚着していけば大丈夫かもしれないけれど、体が冷え切って凍えてしまったらどうしよう…
「冬に行くのも逆にアリじゃない?」
アリか…あられにそう言われると、なんとなくそんな気がしてきた。
もし凍えてしまっても、あられとならそれも面白がれるだろう。
天気予報で一週間の気温をチェックして、比較的暖かい日にあられを誘った。
二人で駅を降り、商店街を歩く。大学生っぽい集団と何組もすれ違う。人混みと若者が苦手な私は少し心がきゅっとしたけど、あられがいるから安心できた。
少し歩くとお店があった。
店内は小さめ。(個人経営のカフェに行ったことが無いから基準がわからないけど)
温かいほうじ茶をサービスでもらう。ありがたい…
室温は温かかった。長袖だと少し熱いくらい。あられは「熱くない?」と苦しそうに言っていた。
二人ともラムチョコレートを注文し、しばらく待つ。
氷を削るガリガリという音が響く。
あられが両手をパーにして前後させていた。
私「なに?それ」
あられ「包丁研いでる」
私「あ、なるほど。
山姥…」
あられ「山姥頑張ってる」
ラムチョコレートが運ばれてくる。二人とも全く同じものだけど、私が先にいただいた(あられはやさしい)
ラム風味のミルクと、刻んだチョコがかかっている。半分にかかっている粉はココア(たぶん)。頼むと必ずついてくるトッピングは練乳を選んだ。
ひとすくい口に入れると、ふわっとお酒の香りが広がった。アルコールの香りが苦手な私は「!?」となったが、そのお酒っぽい香りは最初の一口だけで、それから最後まで香ることはなかった。鼻が慣れたのかな?ラム酒が苦手と言っていたあられも大丈夫だったようだ。念入りに飛ばされたアルコールの怨念が見せた幻だったのかもしれない。
氷はふわっと柔らかい。口の中ですぐ溶けていく。
イメージしていたかき氷とは全然違った。ふわふわの新雪みたいだ。
極限まで軽いアイスのようでもあるな、と思った。
ラムの上品な香りと、チョコレートの香ばしい香りに包まれる。いい匂い。
私「すごいエレガントな味」
あられ「エレガント…笑
エレガントにどうぞ」
私「美味しいですわ」
かき氷って上の方にしかシロップがかかっていなくて、最後は味のない氷だけ食べるようなイメージだったけど、ここのかき氷は中間にシロップがかかっていて、最後までおいしく食べられた。
練乳をかけるとミルキーになってまたおいしい。
味がなくなった時に取っておこうと思っていたのであまりかけられなかった。ちょっともったいなかったな。半分くらい食べたら味変としてかけるといいかもしれない。
最後まで一度も、頭が「キーン」とならなかった。わりと早いペースで食べ進んでいたのに。
いいかき氷はキーンとならない、と聞いていたけど、本当だったのか…
そのことをあられに話すと「今までキーンってなったことない」と言っていた。そんな人いるんだ。
温かいほうじ茶の存在はありがたかった。口をリセットできるし、体を温められる。
食べ終わった後体を温めるために飲み物を注文しようと思っていたが、私はほうじ茶で十分だった。
食べ終わって外に出ても、特別寒いとは思わなかった。温かい店内とほうじ茶のおかげだろうか。
とてもおいしかった。今まで食べてきたかき氷とは全然違っていて、いい意味でイメージを覆された。
思えば、あられと何かを食べに行くという目的だけで、少し遠くまで行ったのは初めてだ。あられと二人でかき氷を食べに行く、という時間は、新鮮で幸せなものだった。
また一緒に行きたい。
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