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チュ―リッブの花畑
春になるといつも思い出すことがある。
それは、今から10年以上も前の話。
オランダで有名な超能力者さんのセミナーがあり、以前から一度行って見たかったのだが、すぐに満席になりチケットは、取れなかった。
世の中には、ものすごいバワ―を持っている人間がいるもので、彼女も数々の奇跡をおこしていた。
僕は、見える世界や見えない世界は、50対50だと思っており、どちらに片寄ってもいけないし、両方ともバランスを取っていくものと思っている。
その日、たまたま知り合いのところに、その人が来ることを知り、電話した。
最初は、満席だと言われて諦めていた所、再度、キャンセルが出たのでどうぞと言う連絡が入り友人と二人で会場に向かう。
話しが始まり、今日のテーマは、"音楽"だと言われる。
誰かが歌うことになり、渋っていると、「この中でビアノを弾ける方がいますね」と、横の友人が肘打ちし、僕を前に出るように促す。
まだ、始まって10分もたたないうちに、満席150人の会場の一番前で、ピアノを弾くことになった。
しばらく、すると、ある少女がステージに呼ばれた。会場が少しどよめく。
大きな白い模造紙がはったボードが登場し、好きに書いて良いのよと、少女に申し渡された。
そこに、僕が即興で音をつけて行って欲しいと言われ、準備する。
少女は、ペンを持ったまま、微動だにしない。
待つこと10分。ちょっとだけペンが動いた。その瞬間を逃さず、ピアノの音をポンと入れた。
すると、また、少し動く。すかさず、また、一音。
だんだんと加速し、ある瞬間を越えたのか、ものすごい勢いで何かを書きなぐっている。
ちょうど、真横に並んでいるので、少女の横顔だけしか見えないので、何を書いているかは、会場のお客様にしか見えていない。
会場じゅうが、どよめき、嗚咽さえ聞こえてくる位、泣いている人がいっぱいいた。
司会の人も泣いてしまい、進行不能状態。
僕は、ずっと彼女に寄り添い、ただ音を奏でていた。
あまりの状態に何が起こっているのかわからなかったが、少女が書いている間は、ピアノを弾き続けた。
そして、少女のペンが止まった。僕も音をそっと止めた。
しばらくの空白の時間が流れた。そのあと、満場の拍手が会場全体に響いた。
そっとピアノから離れ、模造紙のキャンパスを見た。
そこには、たくさんのチュ―リッブが、所狭しに描かれていた。
本当にたくさん、たくさんのチュ―リッブが。。。
後でわかったことだが、実は、少女は、重い自閉症で、全くコミュニケーションが出来なかった子供で、少しでも奇跡が起こって欲しいと、母親が少女を連れて全国を回っていたそうです。
いつも会場の隅にいて、少しも動かなかったそうです。
その最終日が今回のセミナーで、その事を知っている人がたくさんいたから、信じられず、まして、自分から動くような状態では、なかったからこそどよめきになったのでした。
終わった後で、その少女は、僕に駆け寄り「ありがとうございました」と嬉しそうに挨拶した。
春のチュ―リッブを見ると、少女の書いたあの"チュ―リッブの花畑"が、オ―バ―ラップし、あの天使のような少女の笑顔を思い出すのでした。
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