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研究費コンシェルジュの視座_#5/○○に行く

 さて、このシリーズも今回が当初予定していた最終回です。後で思いついた!というのがなければ、ひとまずおしまいになります。

 最後の選択肢はずばり、企業に就職しましょう!というものです。

企業の研究費は多い

 なぜ、企業に務めることが研究費財テクになるのかについてお話していきます。アカデミアでの1人あたりの平均研究費は約2000万円ほどと言われていますが、旧帝大などの名門ラボを率いる研究力の高い大学が、競合的研究費の多くを取得しています。さらに駆け出しの助教よりは、教授の方が実績があり、大型の研究費を取得しやすい傾向にあります。そのため、教育に重きを置いた大学のポスドク研究員が年間に扱える研究は百万円以下というケースも珍しくありません。

 その一方、製薬企業や、研究開発に重きを置いた大企業などでは、1人あたりの平均研究費は3000万円から7000万円にも及ぶことが分かっています。大学全体が使っている研究費の約4倍の額を、企業が研究費として使っているわけですから、当たり前と言えば当たり前です。

 そのため、新入社員が、自身の出身ラボの大学教授の扱っている研究費を超える額を1年目から扱えるケースも珍しくないのです。この方法が、一般人が大学教授を超える研究を扱う一番多い事例と思われます。しかし、その一方で、研究に費やせる時間や論文をかける風土があるかどうかは、会社によって異なります。

基礎研究を大切にしている企業の見分け方

 企業で研究が優遇されているかどうかを判断する指標は大きく2つあります。1つは売上高研究開発費、もう1つは論文発表のアクティビティーの質と量です。

 売上高研究開発費は、売上高に対する研究開発費の割合を示しており、その値が高いほど企業が研究を重視していると考えることができます。(実際はこの値は高ければ高いほど良いというわけではなくて、少ない研究費で効果的な研究開発ができているかという尺度もまた重要なのですが、ここではおいておきます)。売上高研究開発費は、大企業と中小企業で割合は変わりませんが、大企業では売上高が非常に大きいので、その分使える予算は大きくなり、高価な分析機器などを使えることが多くなると言う印象があります。また、分野によって売上高研究開発費の平均値は大きく変わってきます。医薬品では10%を超え、精密機器や電子機器が4%程度、化学3%弱と続いていきます。業界水準と比較して、どの程度高い値を持っているかは企業で基盤研究ができるかどうかを知り、就職を検討する上での重要な指標になるでしょう。

 売上高研究開発費の弱点は、研究費と開発費が一色単にされていて、外部への発信や真理の解明といったアカデミアが思い描くような研究に対してどの程度費用を使えるかが分からない点にあります。そこで重要になるのが論文発表のアクティビティーの質と量です。研究に対してのアクティビティーの調査は簡単で、その組織の名前で論文を検索する、学会発表の履歴を検索することです。もしここで一切ヒットしなければ、その会社では基礎的な研究が励行されず、研究成果を外部に発信していくという風土はないと考えられます。(ということは博士もいないし、研究のレベルも高くない可能性があります。)逆に、もし大量にヒットするようであれば、アカデミックな活動を行いつつ、技術を応用して社会実装するといった研究を実施できる可能性があるということです。

まとめ

 企業に就職して、アカデミア的な研究を続けること、出身ラボの先生の予算を超える研究費を扱うことは、一部の環境で可能かもしれない。そのためには、①企業における売上高研究開発費を調べ、研究員の数で割って、毎年の研究予算を把握すること、②企業の研究アクティビティーを把握することが重要である。その2つをクリアした企業であれば、キャリアのステップとして考えてみてはいかがでしょうか?





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