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【学び】人事制度と組織風土、CHROの役割(その2)

こんにちは、学んだ内容が忘却のはるか彼方へ行く前にアウトプットし、脳に定着させるべく第2弾です。今回は組織風土(組織文化)についてまとめてみました。組織風土とは、組織の行動様式・価値観です。口語で表現すれば「ウチの会社だったらこういう時はこうする」といったものです。他にも「会議のやり方」「呼称(役職・さん付け)」という要素も含まれます。

今回は企業が固有に持つ組織風土の重要性を述べて参ります。なぜ重要なのでしょうか?それは「企業風土が組織の強みにも弱みにもなる」からです。

1.組織風土とは

上述の通り組織風土とは「行動様式・価値観」「作法」です。ルールやマニュアルとは異なります。目には見えにくいですが、メンバーの行動の根底を支える要素です。時にはルールやマニュアルでは判断できない時にどう行動するか、その時の行動を支えるのが組織風土になります。

2.組織風土の形成プロセス

では組織風土はどのようにつくられるのでしょうか。これは一朝一夕ではできません。組織風土は初めに経営者の想いやビジョン、リーダーシップにより生まれます。そしてそれは戦略に落とし込まれ、制度化され、メンバーの日々の行動に内包されることになります。

ただし一人だけの行動が即組織風土に結びつくかとなるとそうでもありません。メンバー間で同じ行動様式や価値観の蓄積が他のメンバーの思考や行動に影響し、そこから生まれた新たな行動様式や価値観が戦略にフィードバックされる。このように組織の中で循環することで組織風土が形成され続けていきます。

この流れに近道は無く、「正しいとする思考や行動」を実践していくしかありません。そして蓄積した行動様式や価値観をメンバーへ浸透させていかねばなりません。

上述の通りその出発点は経営者です。本件に関して言えば経営者は風土の体現者と言い換えられます。まず経営者から正しい思考様式、感情によって、正しい行動の習慣づけをし、メンバーへ浸透させていかねばなりませんね。

3.組織風土の形成に影響を与えるもの

具体的にどういった要素が影響を与えるか列挙してみます。

・外部環境:世の中の変化は組織風土に影響する。

・創業者のビジョンや経営者のリーダーシップ。

・経営戦略

・組織(リーダーやメンバー)の成功失敗体験。

・人事戦略や制度、組織構造。

・儀礼:朝礼や経営者合宿など。

・言語:社内用語、口癖など。

4.組織風土を進化させる為の実践

具体的にはどうすれば良いでしょうか。ざっくり4点ほど。

1)経営者やリーダーが組織風土の進化を声に出し、自ら実践する。

ボトムアップも望ましいが、「影響力」を考慮するとトップが実践を始めることが効果的。ただしこれまでの組織風土が外部の目において評価されない場合、トップが実践に移せるかという問題もある。

2)目指す文化に合ったリーダーを育成する。

ついて行くメンバーが安心できる人材を選び実践してもらう。目指す文化に合わないリーダーは場合により組織の外に出ていただくことも。ただし目指す文化を一部のトップの独断で決め、それが社会一般から評価されない文化となってしまう、といった危険性もある。

3)組織風土について組織内で対話する。

一部の人材による変化を起こすのではなく、メンバー全員が対話をする。ミーティングなどに対話の時間を設ける。これは上述の2)の危険防止につながる。ただし組織にフラットな対話ができる環境が無いと、対話と思しきトップの独演会議となってしまうので、組織の状態(出発点)により風土改善の難易度は変わる。

4)人事制度も変更する。

組織風土に合った行動が評価される仕組みに変える。評価や組織の構造、仕事の仕方も変更する。これにより良き方向で進んでいくとメンバーの動機付けにもつながる。忘れてはならないのが変化の先にある戦略や企業のビジョン、ミッション。そもそもウチは何を成し遂げたかったのか?を忘れてはいけませんね。

5.組織風土のメリット

具体的なメリットはどのようなものになるのでしょうか?ざっくり3点。

1)全メンバー価値観が共有され、帰属意識が高まる。

2)全メンバーの判断軸が共有される。意思決定の速度も上がる。

3)独自の組織風土は他の企業に一朝一夕にまねされない。独自の強みにもつながる。

全メンバーの組織への帰属意識が高まり、意思決定の速度も上がり、その先には他社との差別化にもつながる強みをもたらす。「良き組織風土の構築は企業独自の強みにつながる」というメリットがあるのですね。

6.組織風土のデメリット

残念ながらメリットもあればデメリットもあります。メリットの裏返しです。

1)悪しき価値観がメンバーに浸透する。企業の不祥事の原因の一つですね。終わらないハラスメント問題。これも悪しき価値観からくるものでしょう。価値観というかそもそも論なのかもしれませんが、上司部下の関係は人としての上下ではありませんね。そして上だから下の精神をえぐってもよい訳でもありませんね。価値観なのか教育なのか専門家ではないのであやふやで申し訳ありませんが、上司だから何でも許されるという暗黙の了解(価値観)が存在する風土ってよいものでしょうか。

2)悪しき判断軸がメンバーに浸透する。これも企業の不祥事の原因の一つですね。「その1」でも一部述べましたが、P/Lに固執するあまり崩壊した組織(某電気メーカー:1度目のニュースから数年後グループ企業がまた同じこと繰り返している実態を見ると、組織風土は本当重要だなぁと)の行く末は悲惨なものでしょう。

3)路線の修正ができず突っ走った結果、環境変化に対応できない状態となってしまう。もし外部環境の変化を捉え組織の変化を実行に移すことが出来たならば、企業の衰退や崩壊を防ぐことができたかもしれないという「たられば」は後を断ちません。有名な事例は日本の携帯電話産業の衰退でしょう。

3)についての自分の経験分野に限る予想ですが、今後企業の一部機能のアウトソーシングサービス(以下BtoB)におけるプレイヤーチェンジが頻繁に起こると思っています。以下長くなり申し訳ございません。

従来BtoBは一部機能を機械化、一部作業や意思決定などオペレーションは人が行う体制を「機能化」し、その機能が取引先企業単体で実行するよりもメリットを発生させる商材として販売してきました。取引先の獲得も人的資源(セールスマン)による物理的な行動による新規開拓(一例:新規飛び込み)を主として実行してきました。成功企業のパターンとしては「儲かりそうな市場」を設定し、そこに多くの人的資源を投下し、シェアを広げていく。物理的に都市部を当たり尽くしたら都市部以外に開拓先を広げる。粗々ですがこのようなパターンではないでしょうか。この方法が間違っているのではなく、これからの時代ではこの方法に固執していては生産性が上がらず、勝ち抜いて行きにくいということです。

なぜなら今後は機械の進歩による作業や意思決定も自動化できる範囲が広がります。新規開拓も人的資源の物理的行動による「1:n」では無く、組織や個人の発信力を元にした「1:n」になるでしょう。そうした時に生産性を妨げるのが「旧来型人材(例:営業は足が命?)の人件費」です。機械による自動化や宣伝手法の進歩により価値がなくなった仕事を残し、そこに従事する人件費を抱えるだけで生産性を妨げるマイナス要因となってしまいます。

生産性を上げる為にリストラ(組織の再構築)を行えばよい、は正論ですがなかなかうまくいかないと思います。昨今国内の大手企業が大規模リストラを発表しています。一部の企業の中の人にどうなったか聞ける機会があったのですが、優秀な方の一部はお金を得て退職、現場は混乱といった事が起きているそうです(全てとは言えませんが)。結果組織内に新たな価値を生み出せる人材が不足してしまい停滞を招くことも予想できます。

では生き残る側はどのような体制なのでしょうか。単純に解釈すれば、機能面の機械化(自動化)を徹底し、顧客が価値を感じる機能を「人」が生み出す。そして新たに生まれた価値を機械に組み込み、「人」はまた新たな価値を生み出す、という循環をし続ける体制を取っているのではないでしょうか。

この流れに乗るにはどうしたらよいのでしょうか。鍵は「組織全体の学習習慣と人材の流動性の組織風土を構築する」ではないでしょうか。

学習はビジネスに直接関わる知識や技術を経営者からメンバーまで皆が身につけること、教養を高めることなどがこれにあたります。人材の流動性とは学習を基にして人が組織内外に行動範囲を広げることにあたります。外から人を受け入れる(採用)も流動性の一部です。ここで重要となるのがやはり「組織風土」になります。年齢経験立場での評価ではなく「良い知識や技能、正しい価値観や経験」を学び(得る)続け、それを具現化させることにより評価される組織風土がその要となります。その組織風土が無いと新たに価値を創出したい人は流入してこないですよね。組織風土に関して言えば企業規模が大きければ「オープンワーク」などの口コミサイトにさらされてしまいます。口コミサイトの場合どうしてもネガティブ情報が多くなってしまいますが、価値観を外部から推し量るには有効です。

ただしその組織風土を新たに構築することはとても困難で時間もかかるかもしれません。そして過去の成功体験や悪しき組織風土が強く根付いていた場合は、経営者やリーダー、古参のメンバーは自らの存在価値の否定や立場がなくなることを恐れ、「良い知識や技能、正しい価値観や経験」を持つ者を阻害します。これは人間の自己保存の欲求が野放しにされている組織の状態であれば仕方がないのです。有名な経営者でありマーケターである森岡毅さんも著書:マーケティングとは「組織革命」である。で述べられています。自己保存による影響の記述に関しましてはUSJを立て直された経緯からとても説得力があります。私も自分の経験で古参の自己保存による妨害を受けたことは何度もありますので納得感がありました。

加えて述べさせていただきたいことで、自分の経験だけなので説得力が薄いのですが、古参のメンバーが自己保存の欲求から阻害行動に走る組織で共通していることがあり、それはその組織のビジネスが成立している現在の状況が、既存の業界内ポジションと外部環境によりもたらされているということです。そして顧客が求める質や、法制度が変わることで一気にそのポジションが新たなプレイヤーに奪われるであろうことです(まだそのプレイヤーチェンジは起きてませんが情報技術の発達や法制度の変更で間も無く起きるのではと)。

自己保存の欲求に対する解決策は単純なのですが、4.2)でも記述いたしました「そぐわぬ人物」の退出(それを実現する評価制度などの構築)やリストラを経営者自らが決断することでしょう(もしかしたら経営者自身がそれにあたってしまうかもしれませんが)。そして組織風土を改善し、新たな価値を生み続け、再現性をもって強固な基盤を構築する。

でもそれは長い期間組織の中にいた人材が下せる判断としては高難度です。「あなたががそれをしますか?」と言われかねませんし、現場の混乱を招くかもしれませんし、自らが退出した場合受け入れてくれる先があるかわからないからです。

最後にデメリットをとても長く記述いたしましたが、それだけチャンスも存在しているということです。人材分野のコンサルタントの方にお聞きしたのですが、実際に組織風土を良き方向に改善できている組織は少ないからです(だからこそコンサル業務が成り立つのですが)。

組織風土の重要性、企業の強みにも弱みにもなる。だからこそ組織は取り組まねばならないのではないでしょうか。

今回は以上で締めさせていただきます。

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