記事一覧
蜘蛛型戦車コバモ #6
僕はディスプレイに獲物の影が映らないか気にしつつも、突然響いたアナウンスが気になってしまって仕方ない。
「スキルゲージが、貯まった?」
僕は先程までコバモのディスプレイに表示されていた見慣れないゲージがなくなっていることに気がつく。
「もしかして、あれがスキルゲージだったのかな。でもそれじゃあ、スキルポイントって何?」
僕のそのフレーズが起動キーだったのか、コバモのディスプレイに突然
文を読む楽しみと探す楽しみ
ネットで文章を読む楽しさには、それを探す楽しみが結構な割合で付随している、気がする。
自分の限られた時間をベットして、目についた中からこれだと言うものを読み始める。
そこには、色々な出会いがある。
面白くてするすると読み続けてしまうもの。
そっとブラウザバックするもの。
面白いけど、読むのは今じゃないなとブクマだけするもの。
賭けている時間が貴重であればあるほど、面白い物に出
掌編小説:魔法の黒いかばん
漆黒のコートをまとい、黒いかばんを手に旅する男。
男の持つかばんは、大層不思議なもので、どんな大きなものでも、そのままの状態でしまっておける魔法のかばんでした。
しかも、命を持ったかばんです。当然話すことなど出来ませんが、持ち主が取り出したい物を理解することができました。
子どもの時にかばんを手にして以来、男は肌身は離さずかばんを持ち歩いてきました。
男はそのかばんで、行商の仕事をし
詩:蒼い世界で、7つの節
熱く蒼い世界で1つの箱を探す旅は続く
箱を乗り越え、7つの節の固い固い骨で出来た
彼女と出会う
ゆっくりと興味なさげに、節を回して
軸をぶらさず、骨を組み換え
脇目もふらない、その行き先を
熱に浮かされた私は、ただただ見送ってしまう
唯一持っていた蒼い小箱を
中身も知らず、由来も知らず
捧げるように、かざして見せる
彼女のどこともしれない瞳に映ると信じて
詩:熱を持った蒼い世界で
地平線の果てまで青く、蒼く染まった空間
無数の箱が積み重なって、世界を覆う
一つ一つが熱を放ち
その狭い隙間を縫って歩き回る
たった一つの箱を探す旅
触れる度に手のひらに伝わる熱が
やがて自身の熱と置き換わり
旅を続けるに従い
触れた箱の数が増える度に
熱く熱く耐えられなく
それでもたった一つの箱を求めて
蒼き世界をさまよい歩く
掌編:ムサシの名を背負いしもの (ゲーム小説)
1/27
俺のいる檻に、新顔がやって来た。田舎の片隅にポツンとあるここで、いつの間にやら古参となっていた俺の所にも挨拶にくる新顔。
そいつは俺の背中を見て、何ですかそれって言っていやがる。
こりゃあ、ムサシって読むんだよ。古くは武蔵坊弁慶から宮本武蔵まで、強い男の名さ。
俺の最初のボスが手づから入れてくれたのさ。
3/31
俺がこの檻に来てちょうど10年か。
この前の新入りに聞か
掌編小説:覆い被さる黒い影 (ホラー)
「どうしてこうなったの……。ここは安住の地だと思っていたのに。」
そんな私の思いなど知らず、覆い被さる黒い影は大きく口を開く。
赤い口蓋のなか、蠢く舌。そして鋭い牙が露になる。
振り下ろされる牙が、一気に私に突き刺さる。
私の身にまとう物など、その鋭さに、紙屑のように破れ。
抉りこまれた牙が、私の身体を削り取る。
柔らかい私の身体に、なんのためらいもなく、嬉々として突き刺される
掌編小説:岩塩、喜んで (ホラー)
あの人、今日も帰りは遅いのかしら。
義母と黒猫の夕飯の支度の時間。
楽しい楽しい料理の時間。
料理を始める時はいつも最初に塩の準備から始めるの。あの人が好きな岩塩を削るのよ。
男の人のこだわりって不思議。
この岩塩は風味が違うんですって。
義母もあの人の言うことなら何でもきいちゃう。食べるものは和食ばかりなのに。
いつも、頑張ってミルをまわしているわ。くるくるくるくる。