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肩書を遠慮なく使わせてもらおう
「ポノちゃんはいいよね。看護師さんだから簡単に仕事が辞められて。」
こう友人に言われたのは今から15年ほど前。
20代半ばのときである。
当時大きな病院で看護師をしていたわたしは、仕事を辞めてワーキングホリデーに行きたいとにわかに思っていた。
ワーホリに行きたかったのは、学生時代に習っていた英会話を上達させたかったのと、働きはじめてから行くようになった海外旅行が楽しかったから、という単純な理由。
「ワーホリに行きたい」というまだ空想レベルの夢をなんの気なしに話したところ、冒頭の言葉を友人がつぶやいた。
この友人の言葉を聞いて、わたしって物事を軽く考えちゃってるんだなー、と反省した。
「就職先が見つかりやすい」という看護師の特権(?)にあぐらをかいているような気がして、そんな自分がなんとなく恥ずかしかった。
そしてこの言葉はなぜだかずっとわたしの心の奥底に残り続け、ことあるごとに蘇ってきた。
結局ワーホリに行く夢も、日々を過ごすうちにいつの間にか消えてなくなっていた。
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時がたち、今から2、3年前のこと。
今度は冒頭の友人の言葉とは真逆の言葉をかけてもらう出来事があった。
その頃のわたしは、人間関係の悩みをきっかけに心理の先生のもとで学び始めていた。そのおかげで前よりずっと生きやすくなっていたし、心のことをもっと学んでカウンセラーになりたいなぁ、とワクワクした気持ちでいた。
「カウンセラーになりたい」と心理の先生に伝えたところ、こんな言葉をかけてくれた。
「ポノさんはカウンセラーに向いていると思うよ。ポノさんの持ってる看護師の資格とか肩書とか、使えるもんは全部使ったらいいのよ!」
そっかぁーーーー。
看護師という資格を、肩書を、遠慮せずに使っていってもいいんだ!
「看護師という資格にあぐらをかくべからず」
そうやって無意識に戒めてきたわたしの心が急に軽くなった。
そりゃそうだよな。
だって看護師になるために、勉強も実習も一生懸命やってきた。
国家試験を受けて、がんばって免許を勝ち取ってきた。
看護師になってからだって、本当に本当にたくさんの学びと経験があった。
そうやって育ててきたわたしの「看護師」という肩書だ。
思う存分使わせてもらおう。
どんどん利用させてもらおう。
晴々とした気持ちで、今ではすっかりそう思えている。