最後の映画館
中学生になっていた。
多分、ばあちゃんに連れて行ってもらった、最後の映画館の思い出だと思う。
多分妹が小6だった。わたしたち孫を連れてのお出かけも最後になるだろう、とばあちゃんも踏んでいたに違いない。
その頃には、オカンとも映画館に行くようになっていた。実際家計に余裕が出てきた頃かと思う。わたしたち娘も大きくなり、オカンと楽しめる映画の種類も増えていた。オカンが連れて行ってくれる映画館は、正直ばあちゃんと行く映画館よりも新しくて綺麗なところが多く、わたしはそっちの方に親しむようになっていた。
ばあちゃんはわたしたちに映画を選ばせてくれた。わたしも妹も「ディープ・インパクト」をリクエストした。
(1998年 監督 ミミ・レダー)
中学生になっていたわたしは、デカい画面で、とにかく迫力のある映画を観るのが映画だと思っていた。むしろそうじゃなければ映画じゃない、とすら思っていたのだった。
とにかく、あの頃はまだ小さな映画館が沢山残っていたのだなと思うのだけれど、ばあちゃんと行った映画館は大半が小型で寂れていて、その時もそうだったのだが。
客席に入ってみて、ショックを受けた。
まぁ建物の大きさから大体予想はついていたようなものだが、それは認めたくない事実だった。
ちょーちっさい客席。会議室かな?てくらいの大きさだった。スクリーンも、学校の教室についてるやつかな?くらいの印象。
あの、棒で引っ掛けてスルスルーってロールカーテンみたいなやつ。
「想定と違う!」
スクリーンには、まだ幕がかかっていた。これが開けば少しはスクリーンが広がるかもしれない、と、淡い期待を抱いて上映時刻を待った。
左右に幕が開いて、スクリーンのサイズは約1メートルずつ横に広がった。それだけでわたしは多少救われた。
それでも裏切られた感は否めない。
スクリーンはデカけりゃデカいほどいい、迫力こそ正義、と思っていた時代である。
映画はラストに大津波が来るのだけれど、それを小さなスクリーンで見るリトル・インパクトに悲しみすら覚えた。
今思えば、あれはいい映画館だったのだ。
古かったけれど、赤い座席が小綺麗だった。こぢんまりとしていて、なんだかかわいい感じがしたことは記憶に残っている。
ばあちゃんには色んなところに連れて行ってもらった。車の運転のできないばあちゃんと、妹と3人で駅で電車を待っていると、改札のおっちゃんに「お?えーのう、お出かけか?」
と声をかけられて
「孫とデートよ」
とばあちゃんは言った。
いろんなものを買ってもらったし、いろんな食事もしたのだけれど、わたしの記憶はほとんどが映画館だ。
あれからもう何十年経った。
今、映画といえば、近隣にはシネコンしかない。
綺麗だし、画面もデカいし、座り心地もいい。
古いビニールとホコリの混ざった独特の匂いもしない。無臭で快適だ。
だがしかし、なにか失われたものがある。
小さな映画館にあったあの感じは、今はもう記憶の中にしかない。
いや、記憶の中にでもあるだけ、よかったと思う。