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市民合唱団に入団して、3か月

実は3か月前に、市民合唱団に入団した。

入団した理由と、入ってよかったことを書いてみる。


入団の理由

10月から復学したはいいものの、このまま休学前と同じように学校と家を往復するだけの日々になっては、また私は塞ぎ込むに違いないという確信があった。
閉ざされた世界だけではなく、もっと社会との接点が欲しかった

単発のボランティアや地域系のプログラムには沢山参加するつもりだったが、単発ではどうにも社会と自分との繋がりが生じにくい。そのときは楽しくても、それが終われば何物とも繋がらない無色透明な自分に元通り。そんな生活が嫌だった。

かといって、大学で新たなサークルを探そうにも、3年生なんてほぼ引退時期だし、学校の中だけの活動にとどまるのも窮屈だと思った。それなら休学前と変わらない。
ならば市民サークルに入ってみようと思った。どうせ後大学にいるのは1年半しかないから、この市に住んでいるうちに、少しでもこの町のことを知りたかった。ただでさえ休学するまでの2年半は大学への不適応からこの町に住むこと自体に嫌気がさし、常に「逃げたい」という気持ちに苛まれていた。あと1年半を生き抜くために、少しでもこの町にポジティブな感情を持ちたかったのである。

そんなわけで、趣味から考えて俳句サークルとか、新しく手を出すなら詩吟や華道、ヨガなんかもいいのでは…?と色々考えてみた。しかし、どれも長続きする未来が見えなかった。そのコミュニティに馴染める気もしなかった。人数が少なすぎて高齢層が多いところだと、変に気を遣わせてもいけないし…。

たまたま兄が長年地元で合唱をやっていたし、親戚にも音楽教師がいてしばしば授業教材として使うために合唱の音声の録音を手伝わされていた。合唱くらいなら、まあ、そんなに身構えることもなくできるんじゃないか、市民合唱団ならコンクールに出てバチバチやるほど激しくもないだろうし、と思い、見学してみた。
見学時に久々に歌ってみて楽しかったので、入ることに決めた。少しでも、大学から逃れられる場所が欲しかった。

入団して良かったこと

① 声を出す機会になる🎤

どういうこと…?とお思いではないだろうか。

悲しいことに、私は大学内に友人というものがほぼいない。
学部外にはある程度信頼している人が数人いるし、高校の同級生も8人いるのだが、自分の学部には全くと言っていいほど仲のいい人がいない。入学時にそっけない態度をとっていたツケが、3年生(休学しなければ4年生)になった今もずっと続いているわけである。
おまけに、私が専攻する言語学は、なんと私含めて2人しか学年にいないのだ…!そんなもう一人とも、週に1度会うか会わないか、という感じだったので、必然的に物理的な声を発する機会が私にはほぼなかった。買い物に行った時の「レジ袋いりません」とか、出席をとるときの「はい」とかその程度。
ごくごくたまに知り合いにあって日常会話をした日には、ぼろぼろ波が出て来るレベルで、人と会話する機会がなかった。

ところが私、気の合う人に対しては割とおしゃべりなので、声をとにかく出したかったのである。それができないことがもどかしくて、しんどくて、精神的に参ってしまった面も少なからずあるだろう。

というわけで、合唱団は私が必然的に声を出す機会になった。会話が不得意な私だが、歌うだけなら、ピアノに合わせて、決まったタイミングで声を出せばいい。
…なんとも悲しい人間だが、それでも声を出す場所がある、大声を出すことが許されるというだけで嬉しかった。何より気持ちいい。大きく息を吸って、吐いて、というだけで生きている心地がする。

② 体を使う💃

体を使うといってもがちがちのスポーツほどではないのだが、ウォーミングアップでブレストレーニングをしているときに、自分の体に空気がいかに上手く入ってくるかを考えるのが面白い。

中学生で吹奏楽部に所属していたとき、「楽器をうまく吹くためには楽器そのものの技法よりも、呼吸の仕方・体全体の使い方が大事」ということを何度も教えられた。まさに今、その感覚を思い出している。

浅い息では、頼りない音しか出ない。しっかりと横隔膜を下げて、息の吸い方を見直して初めて出る音と、その響きがある。

一人暮らしの家の布団にくるまってスマホを眺めているより、ずっといい。受動的なだけでいるのは思ったよりしんどい。何か能動的になりたい、という私を、連れ出してくれた。

③ 新しい場所、道、風景をたくさん知った🚵

合唱の練習会場はその日によって異なっていて、今のところ3か所経験した。ホールの練習室、休日のクリニックの一角、地域のコミュニティセンター。
ホール自体はイベントなんかで行ったことはあるが奥の小部屋に入ったことはなかったし、クリニックもコミュニティセンターも行く機会なんてあるはずがない。そもそもその場所が私の家から自転車で行くにはそこそこ遠いので、合唱団の練習がなければ絶対に行かないエリアだった。

そこに行くために、今まで通ったことがなかった道も開拓した。
国道沿いの道に、歩行者と自転車用のこんな細い道があったなんて。それが、こんなにもアップダウンが激しい道だったなんて。でも秋にはセイタカアワダチソウがこんなにも真っ黄色に輝いている。あ、前に1回だけ来た居酒屋は、この道とこんな場所で繋がっていたんだ!…そんな風に、新しい発見をたくさんした

新しいものを知れば知るほど、もっと知りたくなり、自分の世界が広がった。それだけで十分だった。

④ 久々にホールの雰囲気を味わえた🔦

実は入団して2か月目に、なんと定期演奏会でも演奏させてもらった(!!!)

入団時は、さすがに定演には間に合わないだろうから2曲だけ、という話だったが、練習していくうちに何とかなるんじゃないか…?と思い、交渉して全曲出演させてもらった。

その数、なんと8曲!🎼
いやあ私、よく頑張った。簡単な曲目もあったけど、なかなかハードな宗教曲もあり、最初の頃は楽譜を目で追うだけで必死だった。なんとかなるもんだ。

定演では皆さんがドレスを着るということだったが、私は注文してももう遅いので、ブラウスとロングスカートを準備するよう伝えられた。
慌ててメルカリでちょっと高級感のあるブラウスを注文。ロングスカートは、お優しい団員の方が貸してくださることに(勿論後でクリーニングしてお返しした)。

この服で浮かないかな…?と本番まで戸惑っていたが、当日になると気にする余裕もなく、ばたばたとリハーサルが進む。すぐ昼食をとり、ゲスト向けのお菓子の仕分けをして、着替えて、はい本番!!

いざステージの上に立ってみると、ステージライトが眩しかった。それは久々の感覚だった。7年前に、吹奏楽部を引退する前のコンクールの舞台に立った時のことを思い出していた
今回は楽器でなくて歌だけど、誰かと共にステージに立って、ライトを浴びて、大勢の観客がいて、でも指揮に必死で齧り付いて。
懐かしい、と思った。

⑤ 新しい曲に出会えた🎼

吹奏楽部にいたときも自分が知らない曲に次々出会えるのが嬉しかった。くせのある難曲が好きな顧問だったので、リズムがとれず指が回らず苦戦したことも多々あるが、新しい出会いは好きだった。

合唱団に入団しても同様に、こんなに素敵な歌詞が、メロディがあるのだと感じた。宗教曲なんて特に、自分が住む世界では絶対に交わらないもの。それに挑戦する機会を与えていただけたことに感謝したい。

個人的に世間の流行曲にはとても疎いので、吹奏楽部のときも、壮行会などのちょっとしたときに吹く軽めの曲(星野源の「恋」とか)から流行を学んでいた。
今も、そんな風に流行曲を学んでいる(合唱団の中だとかなり若手なんですけどね…)。

⑥ いろいろな方と知り合えた👥

これが一番大きいので、最後に持ってきました。笑

大学に閉じこもったばかりだったら、私は18,19歳~20代前半の、ごく偏った人間のことしか知らないままでいた。それだけでもう自分は生きていくのに向いていないと判断するには、あまりにも早かったのだ。狭かったのだ。

合唱団の中には、本当に色んな人がいる。
定年退職した方、児童部ではなく大人の部を選んだ中学生、自分の仕事で忙しく中々来れない方、仕事があるもののほぼ毎回出席している方、お子さんの食事を用意してから練習に来る方、車椅子の方、何十年も合唱団にいる方、入団してまだ1年も経っていない方…。

多様性がある場所が好きだ。こうしなければいけない、というのではなく、個々の事情に合わせて、ある程度の秩序を持ちながら運営されている場所。マネジメントする方からすればそれはそれは大変だと思うが、それでも許されるのが市民サークルのいいところだと思う。

そして最近気づいたのは、皆が皆この土地の出身者ではないということだ。当たり前のことかもしれないが、そのことを見失っていた。簡単に「この土地の人は~」と決めつけてはいけない。結婚で移住した人、大学入学時にこの地に来てそのままここで就職した人、仕事の転勤で今ここに住んでいるだけの人。

色々いていいのだ、移動するのが人間なのだ。
何も私だけがヨソモノではない


(おまけ)

定演の後に打ち上げがあり、年代が上の方が多いとこういう雰囲気になるのだな~という社会勉強になった🍻(批判ではなく、上の方を気遣ったり、お酌をしたりなど、なかなかない経験だった)。

先日はお誕生日会というイベントがあった🎂
誕生月の人が各自2分程度で歌を披露するという、合唱団以外では絶対に見られないだろうもの。 定番の合唱曲から、季節にあった童謡、個人の好きな歌など、それぞれの方の色が出ていてとても素敵な空間だった。

終わりに

以上、市民合唱団に入団した理由と、入団して良かったことをまとめてみました。

書いてみると、こんなにも入団したことで救われてたんだ!と感じた。大学に閉じこもっていたら、こんな喜びは味わえなかった。特に③⑥があったことは大きい。

合唱団に在籍するのは、卒業までの残り1年3か月。定演の舞台に立てるのも来年の2回目が最後なので、少しでもこの時間を楽しみたい。

そして、卒業までに、この町のことをポジティブに感じられる日が来るといいな。


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