大いなる助走の向こう側へ
筒井康隆さんのこの本は、小説を書いていきたいと思ったときからいつも心のどこかにあった。読み終わってわたしは、絶対仲間もいらない、同人誌にはかかない、一発で新人賞を取って編集者の方がつくまで独りでがんばろうと思って還暦まで生きてきた。
でもそれは間違いだった気がする。『徒然草』の五十二段に、「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」という一節がある。今はそれを思い出してちゃんと書けるようになりたいと小説教室(仮称)に通っている。
通い出してから漢字をもっと覚えることから今を描くことまで、プロになるための小説の作法をみっちりとたたきこまれている。まだまだ不完全で「あちゃー」と思うこともあるが、このゼミから何人ものプロがでているので、食いついていくしかないと心に決めている。
わたしに残された時間は短い。だからすべてを受けいれてすすまなくてはならない。特に毎月ちゃんと書いて出すこと、ミスを認めること、言われたとおりに書き直すことを学んでいる途中だ。
この春からは、ゼミクラスにあげていただいた。そして毎月五十枚ずつの執筆を今はつづけている。
先日、仲間とランチ会があった。メンバーが大幅に増え、高校生なども作家になるために切磋琢磨していると聞きうれしくなった。その一方で「道警を舞台に警察小説を書いている」と話すと、「道警を舞台にした小説なんて たくさんあって、そんなものを題材にしても絶対ダメ、ちゃんといろいろよんでる?」といきなりダメだししてくる人がいた。
その人はその調子で仲間の一人の筆を折らせた。
仲間をライバルとおもって、褒めないのはよしとしよう。でも次々とナイフでえぐるような言葉を繰り出す無神経さにいささかげんなりしたのは否めない。自分では正しいことを言っていると信じてやまないのだろう。
願わくは彼女が大いなる助走の向こう側にたどり着くことを祈る。