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今どきの老人の話 後編

 Yさんとの2回目は、仕事に出かける前の主人と物件を見に行って会った。家の前に着いたとき、まだ来ていなかった、しかし、その時点で勤務時間外なのに、朝早くから鍵をもって駆けつけてくれるのを思い出した。彼が息子ぐらいの年に見えたので、少し不憫な気持ちがわいてきた。当たり前と思ってはいけないと感じた。

 主人が通勤前なので、駆け足で案内してくれて、なんとかそこに決める決心をつけて、あとは私だけで契約にいくことになった。会社に赴いて契約をしたときに、彼がどんな話をしてどんな風に動いてくれたのか、私は後になって思い出した。そして今朝主人に話した。

 それは、私が主人を送って戻って契約にいく短い時間の間に、大家さんに駐車場のどこが空いているか問い合わせ。二階の駐車場には階段なしでいけることを調べ、ただし足の悪い人にとっては、スロープが凍ったら滑る可能性があることも確認していた。100メートル近く回り込んでいくことになるなどを実際に歩いて確かめていた。もちろん屋内の駐車場の空いている場所があって、二カ所のうちどちらが入り口に近いか、その両隣にはどんな車があるかも実際にみて調べていた……。それを思い出したとき、Yさんに対するネガティブな思いは消えた。

 それが仕事だからといってしまえば終わりの話。でも私は自分自身の秤で他人をはかり、ネガティブなことばかり思いついてチェックしていた。

 今私は、思い出さなくてはならないものが多い日々を生きている。しかし近い過去だけで無く、自分が若いときどんなに何もできなくて苦労したかを、腰を曲げて石ころに躓きながら歩き、つばにむせながら思い出さなくてはならないと強く感じた。他人のせいいっぱいを真っ直ぐ受け取れる自分になりたいと思った。老人になったのだから、これからはもう思い出すことを仕事にしたい。

前編は下記



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