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嗚呼、悲しみのネピュラチェーン~彼は誰刻は逢魔ヶ刻~
夕刻の事だった。ドップリ陽も落ちた彼は誰刻。
仕事中に尿意をもようした私は、夕涼みがてら立ちションと洒落込もうと、作業所横の道端に出た。
普段から人気が全く無い、地図にあるのかどうかも疑わしい道端、どこにも繋がっていないのではないかとさえおもえる道端。今も誰もいない。
脳の奥まった所にある【童心】と書いてある扉がゆっくり開く。のっそりと、童心がジャラリジャラリと鎖を引き摺りながら出てきた。アンドロメダの聖衣を身にまとって。
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聖闘士星矢を読んでいた遠き日の私は「ネピュラチェーン」を体を回転させながら放尿することにより再現していた。
今、その時の童心が重い扉を開いて出てきたのである。そして私は薄暗い外に出る。
「ネピュラ…チェェェエエエエンンンン!!!」
くるくる廻る中年。
しぶきをあげ、勢いよくとび出す尿。
白いマスクとつなぎの聖衣をまとい回転放尿する自称聖闘士の中年。
その時だった・・
音も無く、そうステルスが如く突如、自転車に乗った少年が私の神事の最中に目の前に現れた。
繰り返すが、白いマスクとつなぎ姿の中年が回転しながら、道の真ん中でしぶきをあげて放尿し、「ネピュラ!チェェェエエエエンンンンン!!!!!!」と叫んでいるのである。
少年からすればこれはもはや珍事ではなく事件、通報級の事件である。
少年は私の姿を確認するや否や、華麗な自転車捌きでキキィィイイッ、クルシュタッ、ピュゥゥゥーーーとその場を去っていった・・・
「ちょwwちがwwwまってwwwww」と心の中で叫んでいたけど、脱兎の如く去る少年の背中に声なぞ掛けられるわけも無く、ただむなしく、あたりに撒き散らした己のネピュラチェーンを眺めるだけだった。
彼は誰刻は逢う魔ヶ刻。少年は物の怪に逢うたのだ。