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求められる「学力」とは

『2020年からの新しい学力』(石川一郎著)読了。

2020年の教育改革を通して、今後目指す教育の在り方についてわかりやすく紐解いている。これまでは知識の詰め込み型教育だったのが、これから求められるのは知識の活用に重点をおく教育、である。

ポイントは2つある。
一つ目は、「大学入試センター試験」が「大学入学共通テスト」に置き換わり、知識だけではなく「思考力・判断力・表現力」を問う問題が出題される。
二つ目は、「学習指導要領」を改訂し「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間力」に重点を置く教育に変えていく。

この改革により、グローバル化やAI等の新しいテクノロジーがもたらす社会の変化に対応できる人材を育成するというのが基本方針となっているが、理念と現場では大きなギャップが生じている。

なぜギャップが生じているのか。また、どうしたらそのギャップを埋めることができるのか。

まず大前提として、一般論として語られる「学力」というのは、いわゆる「望みの学校に合格する勉強力」を指している事が多い。そのことを踏まえた上で、今後求められる「学力」は「考える力」であるということを理解する必要があると思う。

この「考える力」を育むために、一部の学校では「アクティブ・ラーニング」を取り入れている。私も以前、教育関連の学会に参加し、「アクティブ・ラーニング」は論理的思考力を養うことのできる画期的なプログラムだということを学び、大変肯定的に受け止めていた。

しかしながら、現場では、取り入れたものの「評価が確立されていない」という問題に直面しているとのこと。そもそも、採点の基準が明確でないため、定期テスト等に出題しにくく、「思考力・判断力・表現力」を学校で鍛錬するには「どう評価していくか」ということまで考える必要があり、そこに多くの労傾をかけたくないことから、結果的に敬遠されてしまうというのが現状のようである。

この本では、「思考力・判断力・表現力」を(効率よく)習得するためには、読解力を身につければ良いと説いている。例えば、新聞のコラムを切り取ってノートに貼り、全体をいくつかの段落に分け、それぞれ要約する。最後に全体を要約する。読めない漢字や初めて目にした漢字は辞書を引いて意味を理解しておく。

このように、読解力を身につけておくと、国語だけではなく、数学の文章問題も読めるようになる。(逆に言うと、読解力がないと、他科目の文章問題が解けない事になる)

授業で教えること・自分一人で取り組めることを巧みに線引きしながら、考える力を育てていく事が、教育者(先生だけではなく、親も含め)に求められているという事を、この本を通して学んだ。

この著者は、子どもが必ず身につけるべき3つのことについて、こう説いている。

1.想像力
人間は常に想像力を巡らせながら考える。なぜなら先のことは分からない、現時点で正解がないから「想像する」とのこと。(大人になるにつれ、正解がわかったり、経験値が高まり、想像するということが減る)だからこそ、突飛な想像を子どもがしたとしても、決して否定するのではなく、肯定的に捉える姿勢を見せてあげる。そして、想像したことを、その理由も含めて論理的に表現できるようにトレーニングすることが、論理的思考力の育成につながるそうだ。

2.デザイン力                               芸術要素のあるデザインという意味ではなく、コミュニケーション能力を備え付けた幅広い意味でのデザイン力が必要とのこと。自分の子育てをデザインする力は、様々な情報を参考にしながら、自分達の身丈に合わせたオリジナルなものを構築する力であり、こだわりがあるからこそ、頑張って実現していこうという意欲も出てくるはず、と仰っている。(どちらかというと、このデザイン力は子どもというよりも親の方が求められるスキルかもしれない)

3.自分軸                                 自分軸をつくるものは「好き嫌い」だという。しかし、自分の好き嫌いをよくわかっていない人が多数いる。そうすると、最終的に好き嫌いで物事を選ぶとき、何を選んで良いのか分からない。自分はどうしたいのか分からない、という人が多いそうだ。

自分軸を持つ人、というのは、自分の好き嫌いをよくわかり、自分の頭や心に従って自分らしく生きる人のこと。逆に自分の好き嫌いがわからず、いつも他人の考えや価値観に引き摺られて行動し、その他大勢と同じように生きる人が自分軸を持たない人だと、断言している。自分で選んでいるようで選ばされていないか?

確かに、SNSで上がってくる広告などを見ると、自分の検索履歴に近いものが掲載される事が多い。自分で選んでいるように見えて選ばされてるのかもしれない。

自分の子どもが膨大な情報量に惑わされないように管理するのは、至難の業かもしれないが、親自身が自分の「好き」を突き詰めたもの、突き詰めようとしていることを子どもたちに示していくこと(例:仕事、趣味、生きる姿勢)は、子どもにとっての「自分軸」を育てるきっかけになるとのこと。

大人の生きる姿から子どもが学ぶことは非常に多い。

立派な背中を見せることはできなくとも、好きなことに対し、真摯に取り組む姿勢から何かを学び取ってくれたら、親としては本望である。


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