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(ことばよりみち)仏語の「すまふつ」:ガーンジー語

Baonjour! ── さてこの言葉はどこの言葉でしょうか?

大陸から離れて話されている言葉には、その島の海岸や風に独自の香りがあるように、言葉の響きにもどこか大陸側の言葉とは違う不思議な味わいがあるものです。

例えば宮古島で話されている「みゃーくふつ」という言葉がありますが、「島口」と書いて「すまふつ」という呼び方もあります。みゃーくふつはユネスコから「消滅の危険がある」言語としてノミネートされている言葉です。

日本政府はこれを日本語の方言の一つとしてみなし、基本的に独立した言語とは認めていません。確かに比較すれば統語や語彙などは本土のヤマトグチの標準語と類するものがありますが、会話でそれを察することができるのはまず無理です。

「んー(mm)」が「芋」、「わーつく(ʋaatsɿkɿ)」が「天気」を表しているなどと一回聞いただけで看破することはできないでしょう。ですが、それゆえに宮古島の島口は魅力的でもあるのです。そんな独特な言葉が発達するのは日本本土からも他の沖縄の島々からも離れて言語の共同体が存在しているという要因も一役買っているのではないかと思います。

海外の「すまふつ」

そのような言語は当然、日本だけに存在するわけではありません。例えば、通称「ガーンジー語」という言語を紹介します。下記のビデオでどのような音なのか聴くことができます。

さて、ガーンジーと言われて思いつくのはインドの独立活動家のモハンダス・チャラマンド・ガンジー(マハトマ・ガンジー)くらいだと思いますが、ここのガーンジーはイギリスに属する島の名前です。

ガーンジー島について

ガーンジー島はイギリス南部、フランス北部のブルターニュ地方の北、イギリス海峡に浮かぶ島です。ただし、政治的にはユニークな制度を持っています。

Wikipediaによれば、連合王国には属していない一方で、イギリス王室の属領であるようです。そのため、イギリス王室とは強いつながりがあるものの、イギリス議会や欧州連合の決定などは受け付けない独自の政治制度を持つようです。それが高度な自治へとつながり、ヨーロッパのタックスヘイブンの一つとなっているようです。インターネットのドメインもjpのようにggと独自のものを持っています。

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ガーンジー語とフランス語方言学上の位置

ガーンジー語が話される場所はイギリスに属しているものの、フランス語の仲間に分類されます。

フランス北部で話されるフランス語の方言は「オイル語」と呼ばれ、南の方言の集まりは「オック語」と呼ばれます。これらのグループはフランス語をしばしば二分する方言/言語群として扱われます。これらのうち、ガーンジー語は前者に分類されます。

フランス本土のノルマンディーから離れた島で話されるガーンジー語は、日本の南の島の宮古島で話されるみゃーくふつと同じに、自分が属するグループの大言語の使用地域から海を越えて隔絶されており、また標準化された言語からも切り離された状況下にあります。そのため、フランス語の「すまふつ」と呼んでもおかしくはないのではないでしょうか。もっともガーンジー語はイギリスで、フランス語が属する国と違う国に属している、ということがありますが。

ノルマンコンクエストとガーンジー語

では、なぜイギリスの島でフランス語の仲間であるガーンジー語は話されているのでしょうか。

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