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パンを焦がした話
今日は弟の中学校入学式というめでたい日であるので家族は皆7時頃に起床。昼過ぎから挙行される入学式に備えて着々と用意を整え、私が目覚めるのより少しはやく家を出て合流場所へ向かっていた。
一方私は4/1よりSNSを遮断し友人とも話さず社会との関わりをほとんど失ってから6日。生活はすっかり夜型になり、このような家族の記念日にも定刻通り10:30起きというダメ人間の道をその威勢のなさからは想像できない怒涛の勢いで進撃していってるわけだが、そんな私のためにも少し遅めの朝ご飯が用意されていた。
連日の受験勉強でメンタルのゲージが減っていくのに対応するように増えていく目の下のクマに気を使ってくれたのか、父親は生来パサパサした粉っぽいものが苦手な私のことを考慮してくれたのだろう、半熟目玉焼きを用意してくれていた。(土曜日は父親が朝ご飯を作る当番のため)
これはありがたい。パンに挟んで食べよう。
そう思って薄い食パンをトースターにぶち込むまでそう時間はかからなかった。
パンが中火くらいで炙られ始めたのを確認し、私は不覚にもソファで共通テスト対策の日本史一問一答を始めてしまった。今日は鎌倉時代をやっていたわけだが、大和魂溢れる文系日本史選択者の受験生諸君ならわかるだろう。こういったものはキリの良いところ、つまり時代が一区切りつくまでやめられないのだ。"建長円覚寿福浄智浄妙"なんて臨済宗の僧のやうに唱えていると台所からアニメなら黒いエフェクトがかかるような臭いが漂ってきた。
あ!忘れてた!
除夜の鐘で煩悩が消し去られたようにパンのことをすっかり忘れてた。小走りでトースターへ向かうと、
パンが燃えていた。
パリは燃えているか、いやパンが燃えている。これにはヒトラー総統もビックリだろう。戦争なんてバカバカしいとすら思えてくるかもしれない。
なーんてことを刹那に思いながらトースターの扉をこじ開け数杯の水を垂らす。火は消え、炭素と虚しさだけが残った。食べれるかな‥とも思ったが、前ニュースで焦げたものを食べすぎると癌になる可能性があがるというものを見たのでやめた。これは致死量の発がん性物質だよ。
炭素くんには申し訳ない気持ちを添えた上で夢の島へ旅立ってもらい、新しいパンを焼いた。
目視しながら強火で1.2分、いい塩梅に焼色のついたパンで半熟卵を挟み、ごく僅かな中濃ソースを垂らし口にいれる。
美味しい。美味しい。