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2023年度 早稲田大学 社会科学部 自己推薦入試 小論文 模範解答


 SNSの発達がもたらしたメリットのひとつとして、私は、誰もが自分の関心があるトピックについての情報を収集し、似た興味を持つ人たちとのつながりを作ることができる点を挙げる。しかも、SNSでは、これらの活動の多くを無料で行うことができる。たとえば、ニュースサイトや新聞社のアカウントをフォローすれば、政治・経済・スポーツなどに関して、現在世界で起っている出来事を知ることができる。また、好きな芸能人やアーティスト、作家などをフォローすれば、彼らの近況や新しい作品をチェックできる。そのうえ、SNS上では同じ興味を持つ人たちが集まるコミュニティを立ち上げることも容易であり、日本中、世界中の人々との交流が自宅にいたままで可能である。このように、現代の社会では情報の獲得が容易になり、人々の交流が広くなった。
 他方で、こうしたSNSの発達の負の側面は、情報や人とのつながりが自分の好みに合ったものに偏りがちだという点である。似た価値観や似た環境の者同士でフォローしあうと、同じような情報ばかりが目に入るようになる。こうした閉鎖的なコミュニケーションを繰り返すことで、私たちは、偏った信念や誤った情報が強化されてしまう「エコーチェンバー現象」に陥る。政治的・社会的な出来事などについて、背後に未知の大きな力が働いているとする陰謀論を抱くのも、同じメカニズムであり、現代社会における大きな問題である。
 では、SNSのこうした長所と短所を踏まえたうえで、私たちはどうするべきか。私は、インターネットには自分と異なる意見の人がたくさんいるという当たり前の事実を認識し、自分が偏った考えに固執していないかを謙虚に見つめ直すことが必要であると考える。そのためには、SNSだけでなく、新聞や書籍といった既存のメディアも併用しつつ、安易な情報に飛びつかない冷静さを身につけることが重要であろう。(773字)

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