平成28年度 東京都立西高校 推薦作文問題 解答例2
次のことばについて、あなたが感じたり思ったりすることを六百字以内で述べなさい。
「人生には二つの道しかない。一つは、奇跡などまったく存在しないかのように生きること。もう一つは、すべてが奇跡であるかのように生きることだ。」 (アルベルト・アインシュタイン)
解答例2
ありそうにないことが現実に起きることを「奇跡」という。この言葉には宗教的な響きがある。西洋の諸宗教によれば、世界や人間は神によって造られたという。神が世界や人を創造したという話から奇跡について考えてみたい。
神によって私たちが造られたとしても、私たちはただ受動的に神に従っているわけでもないようだ。なぜなら、私たちは自分を造った存在である神を否定することさえできるからだ。しかし、この自由があるからこそ、「それでも私は、神を信じる」ということに意味が生まれるのではないだろうか。というのも、はじめから神を信じるように神自身によって私たちがインプットされているならば、「私は、神を信じる」と言ったところで、当たり前の話でしかないからだ。「信じる」という言葉は、その否定に裏打ちされているのである。このように神は、自らの存在を否定する自由を持つ人間を生み出した。私はここに、神による奇跡の意味があるように思う。
奇跡などまったく存在しないかのように生きることも、すべてが奇跡であるかのように生きることも、私たちには自由だ。とはいえ、このように自由な人間を、つまり自らの施したインプットを不断に乗り越える人間を生み出す神の創造こそ、奇跡という名に真に値するものではないだろうか。そのような存在者である私たちの日常は、実のところまさにすべてが奇跡によって織り成されていると言えるだろう。(587文字)
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