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2018年度 早稲田高等学院 一般入試 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」 


 相談①と相談②では、成人した息子に対して親が過度な干渉をしており、また、相談③では、高校生が周囲の目を気にするあまり、将来の目標を隠してしまっている。このように、三つの相談はすべて、相談者の年代こそ異なるが、家族など身近な人と適切な距離が取れず、悩んでいるという点で共通する。この悩みの原因の一つとして、私は、相談者の視野の狭さがあると考える。相談①の女性は、自身の価値観にそぐわない主夫という息子の生き方を肯定できておらず、息子のほうもそれを察知したからあえて知らせなかったのだと思われる(この点で、「余分な心配をさせまいと、言わなかった」という回答者の意見はあまりに好意的な解釈であり、妥当とは言い難い)。さらに、相談②の女性と相談③の高校生も、安定した仕事が最重要であるという価値観に縛られている。このように、三つの相談には、物の見方が固定され、狭くなっているという共通の問題が根本にある。
 これに対する回答は、三つとも視点の転換を示唆しており、ある程度評価できるものである。たとえば、相談①に対しては夫と妻の役割を入れ替えて考えることを提案しているし、相談③についても、別の職業を選んでも考古学の研究を続ける道があることを示し、相談者の視野を広げようとしている。 しかし、どの回答もその場限りのものに留まっており、価値観が固定されてしまう状況を抜本的に解消するものではないため、不十分である。そこで、より根本的な解決策としては、相談者が複数のコミュニティに属し、つねに新たな情報や考え方を取り入れようとすることが必要だと考える。
 なるほど私たちは、少数のコミュニティにのみ属することで、同じ人と同じ話題を共有し、安心感を覚える。けれども、そうした閉鎖的な環境に浸ってばかりでは、活動範囲も狭くなり、柔軟な考えが失われる。その結果、価値観が固定化され、新しいことや珍しい意見を取り入れることのできない保守的な人間になってしまう。そうなることを避けるには、あえて「外」へ出ることが重要である。ここでの「外」とは、旅先などの空間的なものだけでなく、物の見方を刷新したり、これまでとは別のコミュニティに入ったりするなど、精神的、社会的な外部も含むものである。その意味において、読書や映画鑑賞は精神的な外出と言えるし、近年オンラインで開催されることも多くなったイベントや勉強会などに出ることで、新しい人間関係や物の見方が得られる。このように、積極的に「外」に出ることで、固定された価値観から自分を一度切り離せれば、相談者の抱える悩みも異なる相貌のもとに見えてくるはずである。(1083字)

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