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2023年度 慶應義塾大学 法学部 小論文(論述力試験) 模範解答

 
 人間の認知能力には限界があり、複雑な世界のあり方に対するコストを下げるために、私たちは世界を単純化する。世界の単純化を示す社会現象として「膜」と「核」がある。「膜」とは資源を囲い込む現象である。「膜」の現象として、貨幣は資本として蓄積されやすく、人々は資本に制御され、資本の蓄積が自己目的化する。また政治においても、国家は自国の利益を最大化することを目指し、国境や国民という「膜」の内側と外側で、敵と味方を明確に区別する。他方で、「核」は中央集権的な組織によって人々が制御される現象である。「核」の現象においては、企業では、経営陣が核となって組織を制御し、資源配分を決定する。また、国家の執行権力が複雑な権力構造のなかで独自の論理で動き始め、国民の意志どおりに権力が執行されることが拒まれる。以上より、経済と政治の歴史で反復される諸問題は、社会システムにおける「膜」と「核」の問題だといえる。

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