2021 埼玉大学 経済学部 国際プログラム小論文 模範解答
問1
性別役割分業体制を維持しようとすることによる問題は、第一に、現行の社会保障制度が人々の様々な生活リスクに対応できなくなっている点である。というのも、かつての社会保障制度は、男性一人稼ぎ手モデルに代表される固定的な性別役割分業体制や、標準型家族を前提としていたものの、現代社会においては非正規雇用率が高まり、家族を形成しない者も増えたからだ。第二に、これまでのような性別役割分業体制にもとづく単線的、かつ縦割り的な制度設計のなかでは、十分に才能を開花させる場面に恵まれない人々が生じる問題がある。というのも、若者や女性も含めて貴重な才能が社会的に承認を受けることなく葬り去られることになるからだ。(297字)
問2
グラフからは我が国において今後、少子高齢化が進行し、総人口が減少していくことに伴い、65歳以上の高齢者人口の割合が高まることや、働き手となる生産年齢人口が減少する状況が確認できる。こうした状況に対して、「包摂型未来社会」モデルの構築が必要とされる理由は、従来の単線的、かつ縦割り的な制度設計のなかでは、十分に才能を発揮できなかった人々の、機会の不平等を是正する必要があるからだ。したがって、「包摂型未来社会」モデルのもと、若者や女性、障害者等も含む少数派の多様な才能を社会に包摂し、支援や投資を行うことによって、社会における生産性を向上させ、経済的な国力を増強する必要があるといえる。(292字)
問3
「価値のパラダイムシフト」は、社会における人的多様性を生み出し、様々なアイデアや能力をもった人々が活躍することのできる社会の形成に寄与する点において、「包摂型未来社会」の構築に貢献しうると考える。というのも、人々に対する評価軸を複線化・多様化することによって、人々の多様性が認められ、多様なあり方をした個の力が発揮されることになるといえるからだ。それでは、「価値のパラダイムシフト」を実現するためには、どのような方策が求められるだろうか。
現行の学校教育現場では、試験の成績が中心的な評価軸とされている。しかし、課題文においては、教育の評価軸を複線化・多様化することが主張されている。したがって、他者と協働して一つのことを成し遂げる力や、他者とのコミュニケーションにおいて合意を形成する対話の力といった多様な評価の観点が求められると考える。というのも、評価軸が複線化・多様化されるならば、多様な考え方や能力を備えた人材が認められ、社会に輩出されるようになるからだ。したがって、まずは教育現場における評価のあり方を改革していくことが、「価値のパラダイムシフト」を実現するための方策として考えられる。(497字)