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2019年度 慶應義塾大学 法学部 小論文(論述力試験) 模範解答
国際人権問題への日本の対応は、以下の要因によって、きわめて消極的で臆病なものである。第一に、日本人の非法的発想が挙げられる。というのも、日本が欧米先進諸国に比して法的発想の弱い社会であるからだ。第二に、人権に対する非宣教主義的文化がある。なぜなら、人権思想が欧米からの「輸入品」であり、欧米に比べて「人権後進国」という劣等感があったからだ。第三に、調和優先的文化がある。というのも、日本は人権侵害に対する対決的な行動を避け、生ぬるい対応をよしとするからである。第四に、日本は国際問題を米国に委ね、追随する傾向が強かった点がある。というのも、国際社会において政治的役割をはたすことはタブー視され、人道的問題に強い関心が注がれることがなかったからである。第五に、未決の戦争責任の制約が挙げられる。なぜなら、日本には戦争責任や植民地支配責任の回避や経済関係の維持という「ずるさ」があったからである。
現代においても国際人権問題への日本の対応は実際に消極的であることが確認できる。たとえば、中国政府によるウイグル人への人権侵害問題に対して、欧米諸国が中国に対して制裁を科す決定をするなか、日本政府は、人権問題を理由に制裁を科すための根拠となる法律が存在しないなどとして、制裁の実施には慎重な姿勢を取り、人権侵害問題への具体的な行動をとることはなかった。それでは、今後、日本の国際人権問題への対応はどのようにあるべきだろうか。
私は、日本も人権という人間社会における重要な普遍的概念を重視し、長期的視野から中国との関係を捉え、日本が貫くべき理念と具体的行動を示すべきであると考える。たしかに、人権問題に対して日本が消極的になる諸要因は認められる。しかし、それらの要因はいずれも人権問題への具体的な対応を直接的に阻害するものにはなりえないと考える。というのも、人権は上記のいずれの要因をも超えて、人類が重視するべき普遍的価値であり、いかなる要因によってもその価値の保護や実現が妨げられるべきではないと考えるからだ。したがって、私たち自身が人権の本質的な重要性を理解し、社会全体として人権侵害問題を許すことのない価値観を醸成していくことが求められると考える。そのためにも、人権教育のより広範かつ積極的な普及を行い、人権問題に取り組むべきであるという社会的規範を備える必要があると考える。(984字)