
2021年度 東京学芸大学 教育学部 学校推薦型選抜 E類教育支援専攻 ソーシャルワークコース 模範解答
コロナ禍において、社会福祉の現場はさまざまな課題に直面している。たとえば、経済活動の抑制にともなう生活困窮(問題)の拡大や、福祉サービスの利用制限、地域活動の自粛による社会的孤立の進行や生活課題の把握困難、感染拡大の予防とサービス提供の両立を求められる福祉施設の運営、地域での感染者等への差別や排除、外国人や若者など既存の制度では対応できない人々への支援課題などが挙げられる。したがって、新型コロナウイルス感染拡大は、社会福祉の現場にこれまでにはないさまざまな事象や課題を表面化させる影響を生んだといえる。
また、新型コロナウイルスの感染拡大によって生じた課題への対応としてだけではなく、これまで社会保障や社会福祉が抱えていた潜在的な問題や、既存の制度や体制では対応できない事態にいかに対応するべきかという問題が生じているといえる。
新型コロナウイルスの感染拡大というこれまでに経験したことのない事態に対応するためには、今回の事態に学び、今後はパンデミックの発生において最悪とされる状況を想定した準備や体制を整備する必要があると考える。というのも、地震や津波などを含む自然災害においても、我が国はそれまでの安全基準や防災体制を見直すことが切実な課題となってきたからである。したがって、社会福祉の現場においても最悪の事態を想定し、職員の増大や地域における連携の強化、中央行政から各自治体に至るまでの具体的な行動計画や協力体制の立案などを行い、将来におけるパンデミックの発生に備える必要があると考える。
また、パンデミックの発生においては、生活困窮者、子ども、高齢者、日常生活に支援を要する人々への支援が急務となることが明らかであるため、平常時からリスクの低減を図る取り組みが必要であると考える。というのも、以上のような人々はウイルス等への感染による種々の問題の発生に対するリスクが高いからである。したがって、パンデミック時の緊急事態における各種組織の事業継続計画を策定し、実施に向けた保健・医療・福祉の広域連携の体制を整備することが必要だと考える。さらに、危機における差別の発生に対しても、差別を受けた者に対する迅速かつ十分な救済措置の実施方法や、パンデミック時における人々の新しい「つながり」方を模索する必要があると考える。(959字)