2020 埼玉大学 経済学部 国際プログラム小論文 模範解答
問1
世代会計とは、社会保障など国の政策の持続可能性を財政面からチェックし、国民と政府の資金のやり取りを世代ごとに調べ、政府が打ち出す政策のコストや発生済みの借金の負担を誰がどのように担うのかを明らかにするための計算である。したがって、世代会計は、現在世代が政府への要求を多数行いながら、その負担増に応じなければ、将来世代が負担を強いられることになり、現在世代と将来世代が利害対立の関係を生じさせるという問題を提起する。というのも、我が国のように少子高齢化が進む社会においては、人口が減少し、現代世代の負担を先送りすれば、将来世代において一人当たりでみた負担額が増大していくからだ。(288字)
問2
グラフから、国民純貯蓄は一九九〇年までのバブル期までは増加傾向が見られるものの、国民純貯蓄の対名目GDP比率は一九七〇年以降、下降傾向が確認できる。さらに、一九九〇年以降、国民純貯蓄は減少傾向が見られ、いわば収入における貯蓄の割合が減少していることがわかる。その結果、二〇一〇年から二〇一四年の間には、国民純貯蓄はほぼ失われるところまで減少している。以上より、国民純貯蓄の減少は、現在世代にある我々がまもなく将来世代に残すべき富に手を付け、将来世代に残す資産が失われていくことを意味する。したがって、グラフから現在世代と将来世代が差し迫った利害関係に直面するという問題が生じることが読み取れる。
(297字)
問3
少子高齢化の進行している状況においては、生産と消費のバランスが崩れている。したがって、働き手を増やし、被扶養者を減らすことが最も基本的な対応策となる。特に、高齢者を従来のように扶養する余裕がないため、高齢者にもその能力に応じて社会を支える主体となってもらい、できる限り扶養する側に回ってもらう必要があるため、高齢者の労働供給を高める必要があるいえる。それでは、高齢者の労働供給を高めるためにはどのような方策が考えられるだろうか。
高齢者の体力や状況には、個人差がある。つまり、定年を迎えた高齢者が皆、元気に働きたいと望み、働くことができるわけではない。したがって、定年後の高齢者が労働に参加することは、高齢者自身の意志に委ねられるべきであると考える。そのためにも、高齢者の多様な生き方の選択肢の一つとして労働が考えられるべきであり、さらに労働に参画してもらうにしても、高齢者の能力や状況に合った就労機会を設けることが重要だと考える。それゆえ、高齢者向けの雇用を生み出していくことが必要だと考える。また、高齢者の働きやすい職場環境や就労体制を整備することも必要になるといえる。(486字)