2016 青山学院大学 総合文化政策学部 B方式 小論文 模範解答
問1
事物には、同一の名を持つ事物のあり方をそれぞれ「まさにそれであるところのもの」とするイデアが存在する。したがって、詩や絵画は、イデアにもとづいて作られた現実にある事物をさらに模倣して作られたものである。その結果、詩や絵画はイデアに似てはいるけれども、本当にあるものではないため、その真実性という点でイデアや現実に劣っている。それゆえ、模倣を行う詩や絵画を国において受け入れない。(189字)
問2
芸術が仮にイデアの模倣であったとしても、芸術は人間にとって不可欠なものであると考える。というのも、芸術はわれわれの持つ一般的なものの見方をいわば、ずらしたり、強調したりする作用を持ち、人間の感性や事物のとらえ方の可能性を広げる点において、人間に不可欠なものだと考えるからだ。したがって、芸術を国家において受け入れないという主張は、以上の人間の可能性を減じることを容認する点で妥当ではないと考える。(198字)
問3
私は、詩や絵画などの芸術が真実性という点でイデアや現実に劣る模倣に過ぎないという主張に反対する立場に立つ。というのも、イデアという基準にもとづいて劣化した対象とされる芸術のとらえ方は、芸術の意義を見失わせてしまうと考えるからだ。たとえば、芸術が単に模倣に過ぎないという考え方にもとづけば、クラシック音楽の演奏会は先人の書いた曲の楽譜を模倣するだけの営みに過ぎなくなる。しかし、クラシック音楽の演奏は明らかに単なる模倣ではなく、人々が行う表現や曲の解釈などの面において創造的な行為であるがゆえに、芸術として認められていると考える。したがって、芸術は模倣であるから劣るという主張は妥当ではないと考える。
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