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2020年度 下関市立大学 前期日程(全学科共通 小論文「論述(長文理解)」 模範解答
設問1
囲碁の「局後の検討」では、勝者はその場の空気を読んで「言い方を調整する」。それには三つの理由がある。一つ目は、敗者への配慮である。二つ目は、敗者に追い討ちをかけるような人間という評判が外部に立つことへの恐れである。最後の理由は、囲碁が形成判断の難しいゲームである以上、勝因が明確ではないことにある。このように、人間が言い方を調整するのは、関係者や第三者、状況によって醸される空気を読むからである。(198字)
設問2
筆者は、二つ以上の欲求が人間に内在していることを人間の特性としている。たとえば、自分自身強くなろうとしつつ強者に虐げられる弱者に同情したり、安定を願いつつ現状打破をめざしたり、白黒はっきりする勝負事を好みつつ比較が意味をなさない世界に惹かれたりする。こうした視点から筆者は、嘘をついたり空気を読んで自分の都合の良い解釈をしたりすることも、誠実でありたいという矛盾した欲求との両立という人間の特性の現れだと解釈している。
これに対して、AⅠは矛盾した欲求をもたないだろう。それは筆者が「AIが常に正直である」と述べていることからも窺われる。また、AIが人間の情報処理能力をはるかに超えていることは言うまでもない。これらを踏まえ、両者のつき合い方として、私はAIが人間の良き相談相手となることを期待したい。なぜなら、AIは高い情報処理能力で膨大なデータから人間の質問に的確に回答できるし、空気を読まないので言うべきことを伝えることができるからである。たとえば、心理カウンセラーは患者に最適な方法をAIに相談することで、知識量や情報処理能力の不足を補うことができる。しかし、カウンセリングの現場では慎重に言葉を選ぶ必要があるので、患者に対応するのは人間であるべきである。このように、AIは人間の目的にそった相談相手となれる。とはいえ、この目的自体の善悪は人間が責任を負わざるをえない。
(588字/400字詰め原稿用紙30行に収まることを確認済み)