2020 鳥取大学 地域学部 地域学科 地域創造コース 前期日程 小論文 模範解答
問一:
小樽雪あかりの路には、地域のネットワークを再生させる役割がある。このイベントでは、地域の人々が企画運営の中心を担うことで、そこがハブになって新しいネットワークができる。運営における交流が図られ、暗黙の裡に組織ができていく。ここには、経済効果だけでは測れない、一体感や住民意識の醸成がある。また、このイベントは、参加の仕方も多様であり、ボトムアップ型である。したがって、イベントによって形成される社会関係も緩やかなものになる。旧来からある商工会議所などでの議論に加えて、SNS上の議論なども通じて共同作業がなされる。こうした顔の見える関係の再構築は、社会問題に対して、中間組織的な役割を果たしている。(297字)
問二:
筆者が述べる地域のネットワークの再生において重要な点は、企画や運営において、従来の特定の組織が中心になる縦のつながりが中心となるのではなく、SNSなどを通じた若者同士の横のつながり、さらには近隣の海外も含めた多様な層が参加することである。
こうした地域のネットワーク再生のための取り組みとしては、たとえば、防犯や防災の見回り活動が挙げられる。冬に拍子木を打って町内を回る火災予防運動や、小学生の登下校の見守り運動などを通じて、地域で起こる火災や犯罪、事故を未然に防ごうとする取り組みは、現在、地元の町内会や消防団など、旧来の組織が中心になっておこなわれている。しかし、町内会のメンバーが高齢化したり、消防団の新規の担い手が減少したりするなど、従来のやり方では必ずしもうまくいっているとは言えない。そこで、こうした活動を、公報やSNS等を通じて広く知らせるとともに、行政からその活動に対する補助金を出すことで、地域の住民のより多くが参加しやすい仕組みを作ることが必要である。
こうした活動が従来以上の参加者を得ることで、市民一人一人が、自分たちの住む地域の安心や安全について主体的に考えるようになるだろう。いいかれば、それぞれの人が、その地域の住みやすさを受動的に享受することをやめ、住みよいまちづくりの実現に積極的に参加し、それを支えていくという意識が醸成される。また、参加者は、互いに顔を合わせてまちづくりに取り組むことになるので、従来の組織での縦の人間関係に加えて、それまで交流のなかった世代の人々とも交流できるようになる。その結果、地域全体の一体感が生まれ、新しく地域に加わった人への警戒感も薄れることになるだろう。したがって、これは、地域の活性化にもつながる取り組みである。(735字)