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2020年度 埼玉大学 工学部 環境社会デザイン学科 学校推薦型選抜 小論文 模範解答
問1
かつて自然は人間による庇護の対象とみなされていたのにたいして、近年ではむしろ人間を支える存在として認識されるように、変化してきた。こうした変化によって、インフラ整備に携わる人々は、防災のための人工構造物の建設と維持のみならず、自然の地形そのものがもつ防災効果を最大化するための働きを促されるだろう。(149 字)
問2
グリーン・インフラとは、自然の生態系や地形の力を防災に活かそうとする発想である。たとえば砂丘や干潟のような地形は、海との緩衝地帯という自然そのものとしての効果によって、津波被害の軽減に寄与するだろう。人工建造物によって防災を図るのではなく、自然の力をもってして自然の猛威から身を守る発想がグリーン・インフラなのである。(159 字)
問3
「津波被害で失われた海岸防災林や砂丘の再生を行う」という項目について説明しよう。海岸防災林や砂丘には防風や防砂効果がある。海岸から吹く濃い塩分を含んだ風によって農作物、建物、自動車、インフラに甚大な被害が生じる。砂丘によって海岸と内陸部とのあいだに距離をとり、さらに人工林を設けることで、潮風が吹き込むのを防ぎ、塩害暴露を避けることができる。また砂丘は防災林を直接の海水侵入から防ぎ、その脆弱性を改善する効果を有する。(209 字)
問4
安全な社会を支える社会基盤施設のあり方について、課題文のグリーン・インフラの考え方に対して、私は賛同する。なぜなら、防災の効果を最大化するためにも、グリーンとグレーをミックスさせる必要があると思われるからである。課題文の考え方では、グリーンとグレーの「ベスト・ミックス」が目指されている。たとえば、自然地形を無視して巨大構造物を建設すれば、せっかくの自然地形のもつ防災能力が減殺されてしまい、防災効果は最大化されない可能性がある。したがって、その地形に最適の人工構造物は何かを探る必要がある。
では、「ベスト・ミックス」とはどのようなものだろうか。私は課題文の「地域の住民の知恵を積極的に導入」するという記述を敷衍したい。日本は、外部では大洋に接し、内部では急峻な山岳を有しており、地域ごとに異なった防災体制が要求される複雑な国である。そのせいで、防災にどのようなインフラが最適かを考えることは容易ではない。そこで、地域住民の知恵が役に立つはずである。というのも、その土地がもつ自然的特徴についてはその地の住民が最も詳しいからである。どのようなグレーであればグリーンを破壊しないか。住民の知恵を活用しない手はないと思われる。
(511 字)