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2022年度 早稲田大学 社会科学部 自己推薦入試 小論文 模範解答


 今後のオリンピックについて、私は、規模の縮小と持続可能性という二点を基軸として企画、運営されるべきであると考える。
 近代オリンピックは本来、スポーツを通した人格の涵養や、人類の平和、人間の尊厳といったものの実現を理念として掲げていた。ところが、1984年のロサンゼルス大会以降、現代のオリンピックは収益増加や経済効果を前面に出す商業主義によって運営されることになった。その結果、巨額の運営経費とそれを賄うためのスポンサー料や放映権料が必要になっている。こうした肥大化のために、近年のオリンピックをめぐっては招致活動が過熱し、IOC委員に対するルール違反の過剰接待や汚職といったスキャンダルが相次いでいる。これらはすべてオリンピックの理念からかけ離れたものである。したがって、オリンピックの本来の精神を取り戻し、行き過ぎた商業主義に歯止めをかけるために、開催規模を縮小する必要がある。
 オリンピックの規模縮小は、持続可能な大会運営にとっても不可欠である。オリンピックが巨大化すると、中小の都市は開催地の候補にすらなれず、大都市ばかりが選ばれることになる。その結果、都市と地方の格差が広がるだけでなく、都市の無益な再開発と開催後の財政の窮乏化、さらには環境問題をも生むことになる。それゆえ、全体の規模を小さくすることに加えて、開催地および開催時期を分散することが必要である。一国、一都市、一期間の開催という現在の形式を捨て、いくつかの競技ごとに開催都市を変えたり、時期をずらしたりすることで、一都市あたりの負荷を軽減し、持続可能な大会運営を目指すべきである。
 このように、オリンピックの高邁な理念に立ち返り、スポーツと環境の調和を目指す「持続可能なスポーツの祭典」こそが、今後のオリンピックのあるべき姿だと考える。(747字)

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