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(基本解説007)危険な香りの民主主義

(政治や法律の基本解説)
(3分で読める)



多数決で決めたことは
おかしいな... と思っても
とにかく「正しいことにしよう」
という思想が民主主義なんです


じつは多数決で決める民主主義には
とても危険な側面もあるのです




民主主義の起源

 民主主義デモクラシーの起源は、紀元前6世紀から4世紀末にかけての古代ギリシャのポリス都市国家にあるのですが、この時代の民主主義は現在のように議員を代表として選んで行うのではありませんでした。成人男子、自由市民が大きな広場に集まり、市民が直接政治に参加していました。

実際はわずか100年の歴史しかない

 この民主主義はアメリカ独立革命とフランス革命以後のこの二世紀を除けば、ほとんどその痕跡がないのです。つまり、民主主義という言葉が実際に広く受け入れられ、権威を持って通用するようになったのは、第一次世界大戦以降のようです。そういう意味では、わずかにこの100年間のことでしかないのです。

市民の多数決で政治を決定する

 市民全員ですべてを話し合うのはさすがに大変です。やがてクジなどの選挙でリーダーを選び、そのリーダーが方針を決めて会議に提出して、市民全員の多数決によってものごとを決定するようになりました。17世紀から18世紀頃になるとイギリスの革命やフランス革命などのように王や貴族が支配する封建制度を倒すためヨーロッパ各地で市民革命が起こりました。このとき革命を起こす基礎となったのが「民主主義」でした。

民主主義の危険な側面

 みんなのためにならなかった政治が、これまでの歴史のなかで数多くありました。悲惨だったのはフランス革命期の時代です。人民の意思によって王や王妃をギロチンで首を切り、農民も大勢殺していく凄まじい時代。みんなが殺せ、と言ったら処刑してしまう多数決ですべてが決められていました民主主義にはこのように危険な側面もあるのです。

問題の解決を先送りにする

 民主主義では、ポピュリズムに流れやすい傾向があります。ポピュリズムとは大衆迎合主義のことですが、「みんなで決める」となれば、みんなの嫌がることを言う人は嫌われます。それを実行した哲学者のソクラテスは自決に追い込まれました。みんなに嫌われないように、好かれるようにと甘い言葉をささやき、問題の解決を先送りするようになります。

人権に合うのは民主政治しかない

 近代の民主政治は古代のそれとは異なり、各人の自由と平等を基本としています。誰でも意見を言うことができるし、聞いてもらう可能性があるということが大きな特徴です。その結果、人間の持っている基本的人権に合う政治の仕組みは課題も残されていますが、いまのところ、この民主政治しかないのです。欠陥があるのは民主主義だけではありません。それを継続的な努力で「より良く」していくのが大切なのです。


参考文献
『民主主義という不思議な仕組み』佐々木毅 ちくま新書
『多数決を疑う社会的選択理論とは何か』坂井豊貴 岩波新書
など



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