交番勤務ってどうなの?(柔道と警察柔道)
今回は公務執行妨害の被疑者を部下と一緒に逮捕した時の話です。
是非読んでいってください。
酔っ払いの寝込み
私が巡査部長になって間もない頃の話です。
当直中、夜12時頃、カラオケ店からの通報で店の通路に酔っ払いが寝ているという通報がありました。
部下と臨場して、寝込んでいるおっさんを発見し声をかけます。
すぐに起きて、こちらの話も通じているようです。
こういった寝込み事案、起きない奴はとことん起きません。
吐いた吐瀉物にまみれながら寝ている奴もいます。
色々な意味でめんどくさいこともありますが、今回は楽そうです。
「さっさとこいつを家に帰らせて、交番に戻ろう。」という感じです。
しかし、大人しく話を聞いていた被疑者が突然「何だ!てめーら、警察官か!?」と言って来ました。
そう、今の今まで「はい、はい」言っていたのはちゃんと覚醒していなかったのてす。
こういうこともけっこうあるにはあるのですが、油断していました。
このパターンか!
そう思って離れようとした瞬間、頭の後ろを手でつかまれ頭突きされました。
かなり痛かったですね。
普通頭突きしたほうも、額が割れる可能性があるのであまり強く頭突きできないものですが、なんせ酔っ払いです。
ちょっと目の前が白くなり、一瞬クラっとしました。
この頃は巡査部長になったばかりだったのですが、私が幸運だったのは部下が高校までずっと柔道をやっていた柔道家だったことです。
柔道部と警察柔道
警察官になって初任補修化が終わるまでに必ず柔道・剣道で初段を取ることができます。
初段ですから黒帯です。
初段くらい持っていないと格好つかないということなんでしょう。
ほぼ間違いなく全員昇段審査に通ります。
しかし、実際1年くらい柔道をかじったところでほとんど上達しません。
学生時代に柔道で初段になった者と警察学校で初段を取った者では、同じ初段でも実力に雲泥の差があります。
はっきり言ってプロと素人ぐらい違うと言って良いでしょう。
ちなみに警察内部では警察柔道(警察剣道)というものがあり、世間一般の柔道と区別されているものが別枠で存在します。
2つの基準があるということですね。
警察署で勤務していても術科の訓練期間があり、たくさん練習に参加していると警察柔道のほうは自然に昇段していきます。
逮捕だ!やれ!
話を戻します。
頭突きを喰らってうずくまってしまった私ですが、横で呆然と突っ立ている柔道家の部下が視界に入りました。
1年目の巡査であれば仕方ないです。
上司の指示の法的根拠さえ分かってないような状態で勤務してますから。
私もそんな感じでしたから、仕方ないでしょう。
しかし、今は彼の力が必要です。
とにかく逮捕しなくては。
逃げられたらますます赤っ恥です。
というのは警察官が公務執行妨害で殴られたりってあんまり良いことじゃないんです。
攻撃されないように間合いをとり、あらかじめ動静監視に努めなくては「警察官たる者としてけしからん!」という風潮があるのです。
すぐに彼に指示をします。
「公妨だ!逮捕だ!やれ!」と。
警察官同士では「公務執行妨害」なんて言い方しません。
短く「公妨」です。
我に返ったような部下はすぐに男に向かって行きました。
取り押さえようとしますが、被疑者もけっこう暴れてなかなか取り押さえられません。
応援を呼ばなくてはまずいかな、と思ったら、部下が柔道のように組んだ瞬間、被疑者を投げました。
まさに一閃。鮮やか。
でもすぐに「あ、ヤバい!大怪我する!」と不安になりました。
だって下は柔道場みたいに畳じゃありませんから。
しかし、意外にも被疑者に怪我はなさそうです。
一安心。
時間と罪名を告げ現行犯逮捕します。
普通は暴れる酔っ払いは3,4人はいないと取り押さえられないんですよ。
さすが柔道家は頼りになります。
またまた余談ですが、警察官になった後、柔道を選んだ者のほうが剣道を選んだ人間より受傷事故が多いそうです。
柔道のほうが剣道より間合いが近いからですね。
今回は以上となります。
お読みいただきありがとうございました。