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エンジニアとアーティスト

カンブリア宮殿のホンダ特集をみた。

エンジンのホンダと言われていたが、脱エンジンであるEVの開発へシフトする。そのシフトにあたってソニーと提携というメッセージから始まり、空飛ぶクルマ(ドローン)の課題を解決する技術開発などが紹介されていた。ここでの課題はバッテリー性能による航続距離の短さで、ホンダは、航続距離を400kmまで伸ばすという。その実現方法として発電しながら飛ぶハイブリッド方式というものを研究開発している。これは小型ジェット機の開発、自動車の開発などの研究ノウハウが集積されているという。ロボットの開発も継続していて、器用にプルタブを開けるロボットのデモが示されていた。

従業員の起業支援の事例として「あしらせ」というスタートアップを紹介。自動運転の開発を行なっていたエンジニアがホンダの起業支援の仕組みを使って起業した。視覚障害者向けに靴に取り付けるデバイスを開発している。

曲がり角が近づいてきたら、曲がる方向を振動で伝えてくれるというデバイス、発売はまだ先だけどテストの様子が番組で紹介されていた。

現在の社長はエンジニア出身、”開発は楽しい”と発言していた。番組の中で取り上げられていた人達はエンジニアを中心としていた。あしらせを起業したのもエンジニア。

無理難題を突きつけられて、それを実現するために試行錯誤しながらものづくりをしていく。それが楽しいという。

僕はソフトウェア・エンジニアとしてキャリアの大半を過ごしてきた。顧客要件を実現するためにコンピュータ・プログラムを書いて、システムを構築していく。既に汎用コンピュータの時代だったから汎用のOSを使ってソフトウェア開発をしていく。物質的なエンジニアリングが無い分、楽な部分と辛い部分があった。モーター制御の仕事の時は、自分が書いたプログラムが、物理世界を操作している様子にとても喜んだ記憶がある。モーター技師はソフトウェアで自動チューニングされる様子に驚異を感じていた。

アーティストのアトリエ/スタジオを訪問している際に、やはりモノづくりを見ることがある。何かを作り出すというのは、作ってみないと分からない楽しさがある。エンジニアとアーティストの共通点のような気がした。

ここで違いは何だろうか?と思い至る。恐らく”無理難題”をアーティストは自分自身で設定している。課題発見の能力のようなもの。

メディウムを探求することとは、ゴドフリーの『コンセプチュアル・アート』で読んだ。

現代人はおもにテレビを通じて世界を知るのだから、テレビという媒体を探求し解明するのはアーティストの役割だ、とも。

トニー・ゴドフリー「コンセプチュアル・アート」P.213

写真を使うことでコンセプチュアル・アートが生んだ最大の効用は、自明のことを表明するのではなく、問いを発する機能を写真に与えたことだった。

トニー・ゴドフリー「コンセプチュアル・アート」p.339


優れた経営と洗練されたアートは共通項がある。優れた経営者が見る世界。アート思考がビジネスに効くという言われ方があるが、どうも疑わしい。ポスト・デザイン思考として持ち上げているように見える。もしくはデザインとアートを混同している。

アートにもビジネスがある。そこを踏まえないことにはスタートラインにも立っていないように思える。引き続き、探求していく。

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Tsutomu Saito
いただきましたサポートは美術館訪問や、研究のための書籍購入にあてます。