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日野公彦 《Tag SALE》 鑑賞メモ

岩田屋本店の2階、高級ファッションブランドが並ぶフロアにコマーシャルギャラリーができた。岩田屋本店のニュースリリースではショップとなっている。展覧会のない時期はアートグッズの販売もあるみたい。だから、ショップなのだろうと思う。

8月のしるしと人類展を鑑賞していた。ハシグチリンタロウを久しぶりに見たくなった。

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そして、8月はアルティアムの最後の展示も見ておきたかった。



展覧会のカタログにあった日野公彦のステートメントを引用、硬筆で言葉が書かれただけの紙が、どのようなものなのか、是非見てみたいと記憶した。

1975年北海道生まれ
4歳の時、叔父の考案したエポック社の玩具「ポカポンゲーム」に感動、漠然と将来は何かを創作する人間になると決めるも何を創作すればいいのかわからぬまま15年悶々と過ごす。生まれつき喘息が酷く小学校も毎年半分近く通えないような子どもであったため、家にあった白戸三平の漫画や、昼ドラ、銀河鉄道999等、アニメばかり観て過ごす。1994年、国語学の研究をしようと国文学科に入学したが、気まぐれに入った書道部で先輩に紹介された井上有一のコンテ書「コンテもをわり」を目の当たりにし、ただ硬筆で言葉が書かれただけの紙から目を離すことができなくなった事実に衝撃を受け、書を始める。1996年から1年間、ウナックトウキョウにて井上有一カタログレゾネ制作のための作品整理に携わる。井上有一が遺した日記から1970~1976年の間に制作された作品の制作年代を特定する作業や作品展示等を行う。



日野公彦は2020年春のグループ展でも見ていた。


百貨店である岩田屋の高級ファッションブランドのフロアにあって、日野公彦が提示していた《Tag SALE》は、現代アート書道作品である。黒い画面が縦線で埋め尽くされ、SALEという看板が浮かび上がる。額装は金色で伝統的な絵画の額を思わせる。この額はアンティークであり、額の脇にはアタリによって削られた個所がある。これは額装も含めて作品ということ。

百貨店を言語化したらSALEという言葉しか思い浮かばなかった。

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書が額装されることで、自らその周囲にコンテクストを広げていく。この書が百貨店に提示される意味とは何か。

シンプルな画面の構成に比べて、華美な額はアンバランスにも見えるが、ここに成立しているシンプルなメッセージ、伝統的なものに対して不確かさを注入するかのような緊張感がある。そして、この作品が岩田屋の高級ファッションブランドフロアに提示されていることに、アイロニーさえ感じた。


本業で百貨店の仕事もするが、今は百貨店のビジネスモデルが転換点にきている。商品の目利きと客の好みを把握した上でのコミュニケーション、それが百貨店の存在意義だったが、仕入れ消化というビジネスモデルが成功体験をもたらし、時代に伴うアップデートができず、今に対応できていない。

この作品を見て、そうしたことが走馬灯のように駆け巡った。

8月で展覧会は終了したが9月中は展示されていた。期せずして再会することができた。こうしたことがリアルで足を運ぶことに潜んでいる。セレンディピティとでも呼びたくなる。このような体験に百貨店のビジネスモデル転換のヒントがあるような気がしてならない。

今の顧客もコミュニケーションを望んでいるのだから。



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Tsutomu Saito
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