18で出産した選択
あの選択をしたからと、
言わずにはいられない。
高校3年生に進級したばかりの春に妊娠した。
これは私の15年前のこと。
当時の彼の子を妊娠したのだか、
私は検査薬を疑った。
欠かさず避妊していたので、
正直びっくりした。
妊娠をまず彼に告げる。
すると更にびっくりすることが。
私が後ろ向きの体勢になったら、
なんと避妊具を外していたんだそうな。
しかも、私にバレないよう
"全部"でなく、少〜しだけ
中に出していたんだと。
私は彼が大好きだったのだが、
一瞬にして恐くなったのを覚えている。
この人はオカシイという恐ろしさ。
でもこわくて立ち止まってる時間は
ないということはわかっていた。
出産するにもあと約8ヶ月。
産まないのなら、あと約3ヶ月しかない。
どちらにしろ時間がないのだ。
彼のことを責めるのは後回しだと思い、
一旦どうするつもりなのか聞いた。
嬉しそうに「責任取ってもちろん結婚する」
と言った。
責任を取る。という言葉に
憧れや男らしさを感じるのだろうか。
ずいぶん誇らしげな顔をしているが、
君は犯罪者だよ?わかっているの?
と思い呆れた。
どちらにしろこんなやつと
結婚する気はさらさら無い。
「私は今日1日で気持ちの整理をして、
明日の夜には親に報告をするので、
あなたも1日待つように。」
と伝えた。
近所の婦人科に着いた時、
ちょうど話が終わったので
彼との電話を切った。
生まれて初めての婦人科。
初めて1人での病院の受診。
勇気を振り絞って中に入った。
受付の人は慣れた感じだった。
待合室の周り視線が痛かった。
だがこっちはそれどころではなかった。
頭がフル回転で色々なことを考えていた。
なのにボーッとしているような感じもした。
左脳はグルグル高速回転し、
右脳は宇宙のような場所で星を探していた。
受付後、トイレで尿検査をして、
待ってる間とても長く感じた。
私から半径10cmほどだけが
時間が止まったようだった。
やっと時が流れたらしく、
名前が呼ばれた先のドアを開けると
怖そうな顔のオジサン先生がいた。
ドアが閉まった瞬間に、
「尿検査は陽性なので妊娠してます。
超音波で赤ちゃん見てみましょう。」
と言われ、隣の部屋へ。
初めて見る婦人科の診察台は
拷問椅子のようだった。
少なくとも大人になってから
こんなに明るい部屋で、
両足をパンカン!!!と広げて
お股を見せたことはない。
しかも複数人に。
椅子を見て少しギョッとして我に返ったが、
案外その後の動作を淡々とこなす自分を
『こんなに落ち着いた高校生、
なかなかいないだろうな』
と客観的に思った。
自分の中に何人格かいるようだった。
頭がこんがらがっていて
気持ちと頭がバラバラだと
こんなことになるのか。
(以後、私はこんな体験はしていない。)
パンカン!!!してすぐに、
モニター越しに我が子を見た。
心臓みたいな丸まるの命が、
弾けて破けてしまいそうなくらい
ドクドクと元気に動いていた。
動いてる丸いのは赤ちゃんの心臓ですか?
と聞いた。
正確に言うと心臓ではないし、
まだ赤ちゃんの形にはなっていないよと
先生がすかさず言った。
でも、もうこの瞬間。
"産もう"と決めたのだ。
可愛いと思った。
愛おしいと思った。
私が守らないとと思った。
このまん丸の元気に動く命を。
あの時の選択を、
全く悔やんでいないどころか
本当に当時17歳だった自分に
よくやった!と言いたいくらいだ。
その後、高校を中退、
彼氏とはさよならをして、
未婚で出産。
私はシングルマザーになった。
誰かと結婚する気はなかったが、
5年後に仕事先で
私と娘の心の支えとなる人ができた。
娘が小学生に上がるタイミングに合わせ、
娘が7才になる年に結婚した。
さらにその2年後に2人目を出産。
今は4人家族で暮らしているがとても幸せだ。
あの時した出産の選択。
その後にした結婚の選択。
2人目の子をつくるか悩んだ末の選択。
どれも私が考え抜いて出した、
素晴らしい選択だと誇れる。
私が幸せなのは
たまたまかもしれない。
でも、間違いないのは、
大事な選択をするときは
あらゆる方向から選択肢を吟味し、
まずは私にとって幸せなのかを考え抜いた。
これといった特技や技術がない私だが、
選択する力はピカイチだと思っている。
この私の幸福度がその証拠だ。