#ロシア憲法改正案について
ロシアで憲法改正案の賛否を問う全国投票が実施され、投票者の8割近い賛成(投票率約65%、賛成約78%)で承認された。
この改憲で、大統領の連続3選を禁じている現行憲法に、現職大統領と経験者の通算任期数をゼロにする条項を付け加えた。プーチン大統領は現在、通算4期目だが、これで任期数がリセットされる。2024年の任期満了後、さらに2期12年続投が可能で、最長36年まで大統領にとどまることが出来る。退任後は「終身上院議員」となり、事実上の院政を敷く。
プーチン大統領の支持母体であるロシア正教会の主張でもある、婚姻は「男女の結びつきによる」と初めて規定し、LGBTなど性的少数者の権利を認めない姿勢を明確にした。
国際協調よりも、自国の利益を優先する考え方が盛り込まれている。「憲法と矛盾する国際機関の決定は適用されない」との条項が加えられた。
ロシアは一方的にクリミア半島を自国領に編入するなどし、欧米諸国からの強い反発を招いてきた。
領土の割譲も禁止される。「隣国との国境画定や再確定を除き、ロシア領の割譲やその呼びかけは認めない」と定めた。
北方領土について、ロシアは「第二次大戦の結果、自国領になった」と主張している。今後、返還に応じない根拠として改正憲法を持ち出してくるかもしれない。日ソ中立条約を一方的に破り、対日参戦した歴史を歪めているのはロシアである。平和条約締結交渉に影響を与えるだろう。
隣接国との国境画定については例外としているが、そもそもロシアは日本との国境は第二次世界大戦の結果として画定済みとの立場だ。ロシアは日本に北方四島の一部でさえも引き渡すことはないと考えるべきだ。
プーチン政権はコロナ禍で求心力に陰りを見せている。年金水準の維持、最低賃金の保障、伝統的な価値観の継承、領土割譲禁止などの愛国主義や保守的な価値観も目立つ多岐にわたる改憲項目200項余を一括して全国投票にかけた。
プーチン氏は00年に初当選した際は「法の独裁」を訴えていた。腐敗と暴力が支配する当時のロシアでは説得力を持った。しかし、権力者の専横を抑制するはずの憲法を、まるで終身大統領制のように改変してしまう今のロシアは、すっかり独裁政治の様相だ。