CONTAX T2とともに
数年ほど前、フィルムカメラを始めたばかりだったぼくは、フィルムに魅せられて、ひたすらに撮っては現像へ出すを繰り返していた。
そんな時、ふと「コンパクトなフィルムカメラ」がほしくなった。一眼レフのような大きさではなく、小さく、さっと持ち出せて、いつでもカバンの中にしまっておけるサイズ。そして写りが良くて、ぼくと同じくらいの年を重ねているカメラで、それでいてかっこいい、長年使い続けていくとっておきの1台がないかと。そんな願いのかたまりのようなカメラを探していたところ、とてつもなく素敵な記事を見つけてしまった。
ほしくてたまらなくなり、すぐにまちのカメラ屋さんへ。ほぼぼくと同い年のそのカメラは、堂々とお店の奥の棚に鎮座していて、次の持ち主が来るのを待っていた。
CONTAX T2がやってきた
ぼくの手元に、コンパクトでずっしりかっこいい、CONTAX T2がやってきた。
まちへ
購入からまもなく、友人と国立新美術館へ行くことになった。当時、「安藤忠雄展ー挑戦ー」が開催されていて、この展示を観に行くことになったのだ。一部、展示作品も撮影可能エリアがあり、心弾みながらCONTAX T2を取り出したのを覚えている。国立新美術館そのものも初めてだったので、黒川紀章の建築物にも見惚れながらシャッターを切った。
思えばこの日、きちんとCONTAX T2を持ち出した最初の日だった。
フィルムカメラで撮影すると、ファインダー越しの世界を文字通りフィルムに焼き付けることになる。デジタルカメラの電子データとは違って、ものとしてのフィルムに焼き付ける。フィルム写真を見ると、撮影時の空気までもが写っているという錯覚にさせてくれる。いや、錯覚ではないかもしれない。現像から返ってきたフィルムには、確かに、”あの時”の一瞬が空気ごと刻まれているのだ。フィルムカメラで撮るという魅力の一つだと、つくづく思う。
今はなかなか外出ができないため、カメラを片手に出かけることを辛抱している。撮りためたカメラロールをびゅーんとスクロールして見返す日々である。きっといつか、日常に戻ることを信じて。
少しずつ、また日々を写していこう。