実写版『リトルマーメイド』はすばらシー!
※2023年6月9日より公開中の実写版『リトルマーメイド』について、内容や楽曲のネタバレをしております。
お気を付けください!
ディズニーはとことんディズニーだった
公開前から観に行く気満々だった、実写版『リトルマーメイド』。
とはいえ、キャスティングについて批判的な意見もちょくちょく見かけていたこともあり、正直おっかなびっくりな心地でもあった。
個人的に、ヒロインがアリエルらしくない、という前評判はそれほど問題視しておらず。
ただ、実際に観てみて違和感を持ったり、実写化事態をいまいちだと感じたりしたくないな、と思っていた。
ディズニーに対してマイナスイメージを持つのは避けたい。そんな謎の心理が働いていたのかもしれない。
しかし、すべては杞憂だった。
ええ、そらもう、『リトルマーメイド』は最初から最後までディズニーワールド全開で、私を迎え入れてくれたわけで。
アニメだろうが映画だろうが、ディズニーはいつだって私に「どきどき」や「わくわく」に素直であれ、と語りかけてくる。
だから私は、ディズニーが好きなのだ。
ディズニーもリトルマーメイドも好きな私の判定基準は、かなり甘いと言わざるを得ない。
キャラクター描写や世界観に納得のいかないひとも当然いると思う。
けれど、私自身は実写版をとても好きだと感じた、これもまた事実だ。
鑑賞後の勢いに任せて、音楽、映像、ストーリーの3点から、ざっくり感想を書き残しておきたい。
名曲ぞろい?知ってた!
『リトルマーメイド』といえば「パートオブユアワールド」に「アンダーザシー」…誰もが一度は聞いたことがあるだろう名曲ぞろいだ。
アラン・メンケンは偉大なり。いやほんとに。なぜあんなにも耳と心に残る楽曲を生み出せるのか、頭の中を覗いてみたくなる。
そして今回の実写版でも、音楽がめちゃくちゃによかった。
私としては正直、曲と映像だけで満足してお金を払います、というレベル。
もうなんでみんなそんなに歌が上手いの?
オーケストラの音で耳が幸せなんだが?
サントラ欲しくなるでしょうが?
脳内の呟きは終始こんな調子で、指先でリズムを取ってしまうほど、音楽と一体化している感覚だった。
アリエルの代表曲「パートオブユアワールド」は、ハリー・ベイリーの透き通って芯のある歌声にぴったり。
人間の世界へのあこがれを募らせる、アリエルのまっすぐさが強く伝わってきて、感動しっぱなしだった。
彼女の歌声を聞いた瞬間、「キャスティング大正解やん」と思ったのは私だけではないはず。
セバスチャンの「アンダーザシー」も、ノリノリで楽しい。
ちなみに私は日本語訳の「すばらしい アンダーザシー」という韻の踏み方が大好きで、いつ聞いてもセンスの良さに感服している。
「キス・ザ・ガール」はちょっとニヤニヤしてしまう、歌詞と曲調がたまらない。
アリエルがエリックとキスできるようにあれこれ奔走するトリオ(セバスチャン・フランダー・スカットル)のお節介っぷりに癒されるし、笑かされる。
ロマンチックなのにコミカル、というバランスが絶妙な楽曲だ。
そして、このくだりでは声を出せないアリエルが、星座の名前と手ぶりを上手く使って、エリックに自分の名前を教える。
(こういう、自然に心の距離を縮めていくシーンに弱いんだよ私は…!)
と、口元のにやけっぷりが暗闇で見えないことに、心底感謝するほど萌えた。
そうそう。忘れてはいけないのが、アースラの「哀れな人々」。
ヴィランズらしい強烈な一曲は、聞きごたえ抜群だ。アースラの強欲でしたたかな性格がよく表れていると思う。
タコの触手をうねらせながらこの曲を歌われたら、なんかもう勢いで契約してしまっても仕方ない気さえする。
ちなみに、アースラ役のメリッサ・マッカーシーもめちゃくちゃハマっていたし、ビジュアルが好みすぎてシールステッカーを買ってしまった。
そして、実写版でエリックが披露した新曲「まだ見ぬ世界へ」も、お聞き逃しなく。
「パートオブユアワールド」と対になるような、エリックの思いが切実に歌われている。
こうした楽曲から、エリックがどうしてアリエルに惹かれたのか納得しやすくなっていると思う。
実写版はディズニープリンセスだけでなく、プリンスの人物像も掘り下げてくれるところが、個人的にはとても嬉しい。
何曲か並べて感想を述べたが、つまるところ全部すばらシーし、とにかく映画館の音響で聞いてほしい。
チケット代の元手は余裕で取れる。(あくまで個人の所感です)
映像も美シー
音楽はもちろん、映像の美しさも『リトルマーメイド』のおすすめポイント。
なんといっても、海中シーンの美しいこと!
アリエルと一緒に泳いでいる気分になりながら、わくわくが止まらなかった。
途中で何度「ディズニーシーのマーメイドラグーンに行きたい…」と思ったか知れない。
また、セバスチャン、フランダー、スカットルたちはかなりリアルに寄せた見た目だが、それぞれのキャラクターの愛らしさから、わりとすぐに見慣れてしまった。
エリックの住む王国も、人々の活気にあふれて美しい場所だ。
とりわけ、海に近くて漁業や交易も盛んそうという描写から、南国のイメージを強く感じた。
そんな明るくのびのびとした気風が、エリックの大らかな人柄を育てたのかもしれない。
陸の世界の描き方にも実写版ならではの解釈が加えられていて、エリックのバックボーンがよりはっきり表現されていると思う。
思わず見惚れてしまう映像の数々に、「来てよかった…!」と心底感動したので、繰り返しになるがぜひ映画館で観てもらいたい。
陸と海、そして親と子
リトルマーメイドは、「2つの世界がひとつになる」ことをテーマにしていると思う。
それは、アリエルの住む海の世界とエリックの暮らす陸の世界、だけを指しているのではない。母親と息子、あるいは父親と娘、お互いがわかり合うことも含まれている。
もちろん、陸と海にも大きな隔たりがあって、簡単に行き来することはおろか、意思疎通することだって難しいだろう。
だからこそアリエルもエリックも迷うし、間違える。それでも、知らないことは学びたいし、自分の目で見てみたいと願うのだ。
特に今回の実写版では、エリックの生い立ちや性格を詳しく描いてくれているところが、アリエルとの恋につながる流れを自然に見せていた。
アニメとは違ってファンタジー感が薄れる実写では、このような掘り下げがあると入り込みやすい、と私は思う。
また、アリエルの父親やエリックの母親が子供を心配するあまり、逆に縛ってしまっているというジレンマもうまく描写されていた。
この前提があるから、親と子がそれぞれ同じ目線に立って理解し合おうとするラストに結びつくのではないか。
奇しくも来月、ウエスト・サイド・ストーリーの来日公演を観に行く予定の私。
ウエスト・サイド・ストーリーもまた、相容れない2つの世界が舞台だ。
リトルマーメイドの場合、ディズニーらしいハッピーエンドを迎えるけれど、たんなるおとぎ話で終わっているわけではないと思う。
エンドロールを見ながら、「人とわかり合うこと」「だれかを愛すること」について、ふと考えさせられた。
実写版「リトルマーメイド」はいいぞ
映画館からの帰路、ずっと「パートオブユアワールド」を鼻歌で歌っていたくらいには、大満足の実写版映画だった。
いろいろ感想はもりだくさんなのに上手くまとめられず、散文になってしまったのが口惜しい。
とにかく私から言いたいことはただひとつ。
「できれば映画館で映像と音楽を体感し、ストーリーにも注目してほしい」
なんてったって『リトルマーメイド』の世界は、すばらシーのだから。