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わたしたちはロシア郵便を愛している
あるいは 十分に愛しているだろうか 愛せているだろうか。
おお ロシア郵便 わたくしは あなたを 愛しすぎてしまう あなたのはやさ 丁寧なしごと あなたの偉大には 何ものも比肩しない おお ロシア郵便 わたくしは あなたを 信じる ロシア郵便を信じるか さもなくば 去りなさい 福音とも 恩寵ともつかぬ あなたはしかし いかにも謙虚に 「ロシア郵便」を名乗りたまう
じっさい、ロシア郵便では紛失も今までいっさいないし(米国郵便では紛失された)、しばしば聞かれる誹謗中傷ほどに遅くもないし(それはまったく事実無根の誹謗中傷であり、EMSでさえない通常の小包がたったの10日で届く!ほぼ同時に頼んだ米国便より断然速い)、非常に細やかに追跡履歴が記録されるし(日本の郵便局で受理された記録が日本郵便よりも早くロシア郵便で確認できるほど)、さらには安い(3kg4千円の買い物に対して送料3千円である)。このコロナの時代においてもこの質をキープできることのすごさ、すばらしさ、優秀さ。
ちなみに今回、わたしは書籍を買ったのですが、モスクワの独立系書店Фаланстер(ファランステル;http://falanster.su)をも、あなたは信じるとよい。店名からも想像できるとおり、「金銭を書籍と交換します」をスローガンに掲げたりフードバンクをやっていたりするアンチ資本主義のかっこいい書店であるのだが、学術文献の入荷も早いし(ロシア科学アカデミー出版の学術書がなぜか本家アカデミーの書店よりも早く入荷しており、アカデミーはFalansterの投稿を後追いでリポストする形で新刊案内をしばしば行っているほど)、まったく安いし、クレカやApple Payなどを利用できる支払いも非常にスムーズで、返信も発送も尋常でないほど早い。HPで在庫検索はできない(今後リニューアルを予定しているらしい)ものの、SNSの新刊案内で気になったらすぐメールで注文できるし、既刊についてもメールで在庫を尋ねればすぐ探してくれる。網羅的ではないが、HP上でいちおうの在庫リストも確認できる。
もしロシア語が使える方で書籍を購入することを検討しているならば、OZONやラビリントなどのインターネット大手はそろそろやめて、Фаланстерをはじめとした独立系書店でお金を落とされてはどうだろう。資本主義に加担して良いことはないし、もし加担せざるを得ないならば、資本をよりよい場所の方へ積むほうが社会にとってよいというのがわたしの信じていることだからだ。今までの利用経験ではペテルブルグのВсе свободны(https://www.vse-svobodny.com)も非常に良かったし、同じくペテルブルグのПорядок слов(https://wordorder.ru)を利用して通販した友人も知っている。おおむね、インターネット大手よりも送料が安い。ロシア郵便の実費だけが請求されることが多いからである。(なお、ロシア国内の独立系書店を一覧にしているサイトがあるので参考にするとよい→https://bookshopmap.ru)
結論としては、ロシア郵便を愛し、ロシアの気骨ある文化人を援助しよう、ということになる。ただしそれにあたっては、あなたの常識だとか当然を先方に押し付けないことは当然のことである。
ちなみに今回買った本は、今年ついに刊行されたアンドレイ・プラトーノフ『チェヴェングール』の待望のアカデミー校訂版(М.: ИМЛИ РАН, 2021)、それからユーリイ・アッヴァクーモフ『ペーパー・アーキテクチャー・アンソロジー』(М.: Гараж, 2019)。特に前者がこのタイミングでついに出版されたことは、現在日本語への翻訳中のわたしたちにとっては思いがけない僥倖だった。後者は、ブロツキー+ウトキンら後期ソ連が輩出したペーパー・アーキテクトたちをはじめて網羅的に紹介する記念碑的な図録。
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