「自分の薬をつくる」とは?
『自分の薬をつくる』(坂口恭平著)のタイトルを見たとき、食事療法か何かの本かと思いました。
けれど、予想とは違い、まったくもって素敵な本でした。
心が軽くなり、ワクワクが出てくる本。
私のなかの本のベスト10に入った本です!
みんなの「悩み」に対して、強力な効果がある本
著者は、個人で自殺する人を救おうと「いのちの電話」みたいな、「いのっちの電話」という電話相談を10年近くされています。
こう書くと、なんと福祉的な人だろうと思うのですが、イメージは全然違います。
著者自身、躁うつ病であり、自分を実験台にして試行錯誤してきた人。
今は、自分の薬をみつけて、受診も服薬もしないで済むようになったと本には書かれています。
「いのっちの電話」ふうなワークショップから得られた「自分の薬の作り方」をまとめた本
この本では、誌上ワークショップになっていて、著者が医者で、参加者が1人ずつ診察室で悩みを話すというもの。
診察室は、ホワイトボード1つで他の順番を待っている参加者たちと区切っているだけで、話は筒抜けです。
つまり、自分の悩み、そして著者がきいたりアドバイスすることを全員が聞いているというわけです。
ほとんどが20代~30代の若者で、精神科に通院している人もいます。
みんな色々な悩みを話します。
・仕事が続かない
・人に言われたことを気にしてしまう
・締切があるのに、やらないといけないことができない。
・誰に対してもよくみられたいと思ってしまう。
・人間関係がうまくいかない。
etc…
みんな人の悩みを聞いていくうちに、「自分だけ」悩んでいると思っていたものが、「な~んだ、みんな悩んでいたのか!」ということを知ります。
自分だけ悩んでいて、みんな「幸福そう」に見えていたのは違っていたのです。
そうすると、それは、「悩み」ではなく、人間の特徴みたいなものになる、と書かれています。
声になっていなかったものを声にする
絶望していること、孤独感、失望、聞いてもらいたいこと、これらの自分のなかの声は、外に出す(人に話す)ことはありません。
でも、外に出すその行為そのものが「くすり」だと著者は言います。
精神科では、病名をつけられ、薬をもらいますが、悩む声をきいてくれることはありません。
そして、あまり完治することはないです。
カウンセリングは高額のところが多いです。
アウトプットの大切さ。下手でも何でもいいから、やってみる
この本のおもしろいところは、著者が芸術家であり、どの人にも「好きなこと」「やってみたいこと」を訊いて、どんどんアウトプットをすすめるところです。
手や体を動かすことが、その「声」に時間を取られないことでもあり、むしろその「声」は、アウトプットをするときであることを教えているのかもしれない、と書かれています。
このときに、大事なのは、うまいか下手かはまったく関係ない!
ただパッと思いついたまま、やってみる。
私もそうですが、好きなことや、やりたいことはあっても、
「もっと上手くできる人がいるから」、
「やっても何もならない」
なんて、思ってしまいます。
私は福祉の相談員をしているので、精神疾患の人と出会うことも多いです。
そして、病気はどうしたら良くなるんだろう、とずっと思っていて、本を読んだり講演会に行ったりもしています。
この本は、楽しくて、本当に病むことへの処方箋になっていて、他の本とは全く違っていました。
読んでいて、すごく楽しくなりました。
あなたの悩みは、あなたの「死にたい」は、みんな思っていること。
そして、あなたの「やってみたいな」とふと思ったことをやってみよう。「欲しいな」と思った物を作ってみよう。
上手い下手、「やったことない」は考えない。