流浪の月(感想)
作家凪良ゆうさんの『流浪の月』という本を読んだ。
小説を読んだのはいつぶりだろう。
ここ数年、実用書とか自己啓発本とか、こう、生活や人生に直接関わってくるような本ばかり読んでいた。
高校生までは小説ばかり読んでいたのに。
大学一年生のとき、今日みたいに小説を一気読みしたことがある。
村上春樹さんの『色彩を持たない多﨑つくると、彼の巡礼の年』だ。
あれもとても面白かったなあ。読み終わった後の心のもやもやがすごくて。
その後ひたすら、本に仕掛けられていた謎についての考察を検索してたなぁ。
いっつも、現実逃避したいときに、たまたま置いてあった小説を読んでしまう。
でもそういうときの方が、小説にのめり込めて、一気に読める気がする。
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ここから少しネタバレあります。気をつけて。
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『流浪の月』の「流浪」の意味を調べたら
「住むところを定めず、さまよい歩くこと」(goo辞書)
だった。
そのまま言うと「さまよい歩く月」になる。
では「月」は誰なんだろう。「文」なのか。「更紗」なのか。2人ともか。
なぜ「月」なのだろう。
月は太陽に照らされないと、地球上の人々は見る事ができない。
この人々は「世間」の事だろうか。もしそうなら、「世間」に見つからないようにさまよい歩く「更紗」と「文」ということになりそうだ。
勝手な世間の中の、ある一人の私の解釈だけれど。
サイトでこの本の感想を少し見たけれど、やっぱりいろんな意見があった。
褒めたり、その反対だったり。
今は、SNSや動画サイトで、簡単にたくさんの人の意見が見られる。
自分の意見も言える。このnoteだってそうだ。
人の意見ばかり見ていると、自分の意見がわからなくなる。
頭でっかちになりそうで怖い。
自分はなんでも信じてしまう性格だから、余計怖い。
過激で目を引く意見を鵜呑みにしたり、多くの人が賛成する意見こそが正しいと思ったり。情報を得る、そして考えるという過程を飛ばして、他人の意見を自分の意見であるかのように振る舞ってしまいそうだ。
この本の感想だってそう。本当は、人の意見を見る前に書くべきだったのだ。
この本の登場人物は、どこかしら、別世界の人たちのようで、すぐ隣にいそうな人たちのような気がした。
その描写は最初と最後の章に書かれてる。
家庭の問題とか、病気とか、こんなことに悩まなくちゃいけないなんて、自分はなんて不幸な人間なんだ、と思ったりもするけれど、実はそれは自分だけじゃなかったりする。そのことで悩んでいる人は他にもいるんだ。
平手さんの「角を曲がる」という曲がとても好きで、聴くといつも泣いてしまうのだが、その歌詞の意味そのままだ。
あと、だいたい悩んでることって、自分のすぐ近くにいる人たちに理解されることは少ないと思う。
なんでなんだろう。
そうして悩んでいて、誰にも打ち明けられなくて、あるとき、少しでもそれを理解してくれたり、肯定してくれる人に出会えると、なんていうか、急に世界が広くなるのを感じる。
そうした経験が何回かある。
理解してくれるのはだいたい、自分とある程度の距離がある人とか、人ではなくて本だった時もある。まあ、本も人が書いたものなんだけど。
『流浪の月』の中盤の方までは、「更紗」はずっと世間に「理解してもらいたかった」ように感じた。「文」は悪くないんだと。
終盤の方では、理解されなくても、ただ「文」が幸せでいてほしい、みたいな想いに変わっていったように思う。
「更紗」はかなり「自由」であることも、強調されてた。
ずっと押さえつけられた生活の反動か、「文」が住んでるマンションに引っ越してしまうし。
すごいなぁ。
普通できないよ。相手の迷惑とか、考えてしまって、その一歩が踏み出せない。
世間の人たちは、そのラインを超えないように生きているんだろう。
「自由」を謳歌する人には、その自由において、おこなった事に対する「責任」を負う覚悟が必要だ、と中学生のときに習った。
初めて、自由の国アメリカに行ったときに言われたことだ。
「更紗」は「自由」における「責任」を負うことができていたのだろうか。
そもそも、そんな「責任」なんて負わなくても良かったのかもしれない。
始終かなりハラハラする話だったから、終盤の穏やかさが、少し不思議だった。私にはハッピーエンドのように思えた。
あまりにも穏やかだから、少し変な感じだった。
私が一気読みできる本は、だいたい後味が悪い。何かしら、不穏な雰囲気が残る。
たまたま、そういう本ばかりあたってきただけなのかもしれない。
「更紗」と「文」の場合、これから困ったことや嫌なことがありそう、という点では「不穏」と言えるかもしれない。
ただ「流浪の月」のとおり、それでもふらふらさまよって、平和に暮らして生きそうな予感がする。
結局面白かったのか、面白くなかったのか。
そもそも本を一気読みしている時点で愚問だし、こうして初めて感想を書いているのだから、そういうことだ。
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