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インターネットの亡霊。

私は、インターネットの中で、成仏できない思いとともに生きている。

ちょうど仲の良い友達のLINEが急に消えたので、
一筆書いてみたくなった私のお話。

高校2年生のとき、私は1歳上の先輩に憧れていた。

かっこよくてみんなの人気者で。
いわゆるスクールカーストの上位にいるはずの人なのに、
地味なくせに無理して派手になろうとしていた私に優しくしてくれて、
恋心というよりは素直に憧れの存在だった。


高校3年になったばかりの4月。
カフェでの会話。


「私早稲田行きたいんすよ。今めっちゃバカなんですけど!絶対入りたいんすよねー」

大学に入って1週間経ったばかりの先輩は、
少し驚いた顔で私を見た。

「えっ、お前めっちゃすげえじゃん!
いいよ、受かったら盛大に祝ってやるから。
大学生は楽しいぞ!がんばれよ」

その日に解散してから、何度かメールのやりとりをしたあと、
5月を境に、一度も先輩から返信が来ることはなかった。


きっと大学が楽しくて、
私のことはもう忘れちゃったのかな。

やっぱり私が近づくような器じゃなかったんだ。


ちょっとショックだったが、
まあそんなもんかと思って自分を納得させた。


月日は経って、
私は第一志望の早稲田大学に合格した。

先輩に報告したかったけれど、臆病者の私は連絡が出来ず、そのまま日常を送っていた。

ちょうど先輩と連絡がとれなくなって1年が経った日だった。

GWを目前に、大学生が犠牲になった事故をピックアップしたような記事を、yahooニュースで見つけた。

物騒なこともあるものだ…と何気なく記事を読んでいたら、昨年バイク事故で亡くなった学生の話が載っていた。

載っていた記事の名前は、
紛れもなく憧れの先輩の名前だった。

亡くなった日付は1年前の5月1日。

私と最後に連絡を取り合ったのは、
そう。ちょうど昨年の5月1日だった。

「新しいバイクみて!かっこいいだろ」


確かそんな内容だった。

「お、いいですね~似合いますね~」なんて、バイクのことが詳しくない私は、適当な相槌を返していた。

それが最後の会話になるとも知らず。


ごめんなさい。先輩は、私のことを忘れていたわけではなかったんですね。

まだ大学合格のお祝いしてもらってないです。盛大にお祝いしてくれるって言ったじゃないですか。

先輩に、よくやったな――!って笑顔でほめてほしかったなあ。


その日、先輩と私の間で結ばれていた糸は、
ただの電波にのったインターネットというか細い糸だったことを、強く思い知らされた。


そうだ。最後に付き合った彼氏も、突然ブロックされたと思ったら、
最近急にLINEの「メンバーがいません」という表示になったんだ。

私の手元に残ったのは、もうアイコンも名前もIDもなくなったただのトーク画面の中に閉じ込められた、

「ずっと一緒にいようね」「これからもよろしくね」

の言葉たちだった。


このときあなたはどんな思いで、
こんな文章を打ってたんですか?

聞きたくても、聞ける相手はもうどこにもいない。

だから私は、決めていることがある。

嫌なことがあっても、どんなにムカついても、一時の感情で誰かをブロックをしたり、IDを変えたりしない。
つらかったことも、楽しかったことも、悲しかったことも、全部とっておきたい。


私にとって、何よりも悲しいのは、思い出が消えることなんだろう。

私だけ、亡霊のように、
あなたたちの言葉をずっと、インターネットの宝箱に閉じ込めているのです。

だから、どうか。

あなたは、
急にいなくならないでね。

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